愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】
第6章 籠鳥恋雲
「えっ‥、十八‥?」
僕の肩を抱いていた翔君が、大袈裟なくらいに驚きの声を上げる。
「嘘‥でしょ?おれ、てっきり年下だと思ってたのに‥」
翔君の顔が、見る見る苦笑いに変わって行く。
「おれは来月で十七になるから、智の方が一つお兄さんなんだね?」
「えっ‥、十‥七‥?」
僕よりも、ずっと大人びて見えるのに‥
それに十七と言うと‥確か和也と同じの筈。
和也もどちらかと言えば、僕と一緒で幼く見られがちだけど‥
同じ十七でもこうも違うものかと思うと、自然と笑いが込み上げてくる。
「な、何、急に笑い出したりして‥。おれ、何かおかしなこと言ったかい?」
「い、いえ、そうじゃないんです‥、ただおかしくて‥」
もう笑い方すら忘れてしまったと思っていたのに‥
「やっぱり君は笑っていた方が可愛いよ」
「えっ‥?」
「あ、その‥変な意味じゃなくてね、君の笑顔はとても気持ちが穏やかになれると言うか‥」
僕の‥笑顔が‥‥?
そんなわけない。
だって、今まで僕が出会った人達は、僕の微笑みは魔性だと言った。
僕の笑顔に騙されたとまで‥
そんな僕の笑顔が、人の心を穏やかにするなんて‥
「あ、おれそろそろ行かないと‥。実はね、今日嘘をついて学校を休んだんだ。あ、勿論初めてだよ?」
嘘をついてまで僕に‥?
「だからね、部屋にいないことが知れると、面倒なことになるんだ。それにね、遣いに出した使用人も戻る頃だし‥」
翔君は僕の肩に回した腕を解くと、僕の着ていた羽織りをそっと脱がせた。
「本当はね、貸して上げたいんだけど、兄さんに見つかれば智がまた酷い目に合うかもしれないから‥」
その言葉に、僕の胸がじんと熱くなる。
この人はやっぱり温かい人だ‥
今まで出会った誰よりも‥
「あの‥、また会えますか‥?」
願ってはいけない。
“次”があるなんて期待しちゃいけない。
僕に会いに来れば、少なからず翔君の身にも危険が及ぶかもしれないのに‥‥
それでも僕はどうしても聞かずにはいられなかった。