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愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】

第6章 籠鳥恋雲


智side


吐き出しても吐き出しても、治まることのない熱を身体の中心に抱えたまま、白々と夜が明けていく。


僕は涙でぐしゃぐしゃになった顔を、手の甲で乱暴に拭うと、穢れた身体に薄汚れた着物を纏った。


そして腰紐を手にした瞬間、僕の中にある考えが浮かんだ。


もう全部終わりにしてしまおうか‥


僕はふらふらと立ち上がると、天井に張られた梁に向かって腰紐を投げつけた。


でも力なく投げた腰紐は、梁に掠りもせずに床に落ち、僕はそれを拾い上げると、再び梁に向かって投げつけた。


今度は上手く行った。


僕は少しだけ背伸びをして、震える手で腰紐の端と端をきつく結わえると、部屋の中をぐるりと見回した。


でも僕の望む物はそこには一つとして見当たらず‥

仕方なく薄っぺらな布団を畳むと、それを何枚か重ねた。


元々僕は生きていてはいけない人間なんだ。

父様と母様が死の間際で救ってくれた命だけれど‥

流石にもう疲れたよ‥


ごめんなさい、父様、母様‥‥

愚かな僕を許して‥‥


僕はゆっくりと積み上げた布団に攀じ登り、輪にした腰紐に首をかけた。

これで楽になれる‥


そう思ったその時、僕の身体がふわりと宙に浮いた。


「何をしているんだい!馬鹿な真似は止めるんだ」


身体がぶら下がる直前に部屋に飛び込んで来たのは、潤の弟だった。


「離して‥!僕はもう‥‥」

これ以上屈辱を受けながら生き永らえるなんて、僕には耐えられない。


潤の弟は僕の首から腰紐を外すと、ゆっくりと僕を床へと下ろした。

そして僕よりもほんの少しだけ広い胸に僕を収めると、涙でぐしゃぐしゃになった僕の頬を、その穢れを知らない綺麗な手で撫でた。

自分の手が穢れてしまうこと厭うこともせずに‥


「何があったのか、おれには分からないけど‥。いいんだよ、泣きたければ存分に泣けば‥」


どうしてだろう‥

潤の弟だって分かっているのに‥

僕の両親を死に追いやった男の息子だと分かっているのに‥

どうしてこの男の胸は、こんなにも僕を優しく包み込むんだろう‥



僕は、僕を丸ごと包み込む、まるで陽だまりのような胸に抱かれて、初めて声を上げて泣いた。
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