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愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】

第6章 籠鳥恋雲


潤side


しんと冷えた部屋に、むせ返るように樽の中で熟成された洋酒の香りが漂い、俺の欲望に貫かれた美しい獣は、苦痛に満ちた呻きを洩らした。


空を掻く小さな手も‥俺を求めている訳ではない。

掴んでもらえさえすれば誰でもいいんだろう。

何も俺でなくとも‥いいんだろう?


俺は忌々しいとさえ見てとれるその手を取ると、片膝諸共一括りにする。

「い‥や‥‥、こんなの‥いやぁ‥っ‥」

救われない者の流す涙は、酷く俺の欲望を満たした。



泣け‥叫べ‥‥

そして俺を‥俺だけを求めてみろ。

淫欲を満たす為だけではなく、その心までも救われたいと縋ってみろ。

俺を誑かし心を奪おうとする賤しい心を捨ててしまえ‥でなくば粉々に壊してしまうまでだ。



欲望の塊を熱く締め付ける肉壁を甚振るように突き、その奥にあるものまで揺さぶると、屈辱に震えていた唇から、淫らな声が吐息と共に洩れた。


淫靡な色に染まった吐息。



‥‥満たされたか。



後孔の咥え込んだ物で慾を深めた身体は、面白いほど乱れ始める。

男の欲望を知っている肉壁は、つぶさな快感でさえ掻き集めて、たらたらと滴る慾の雫へと姿を変えていく。

俺は純朴な友を狂わせた大野智の見せる嬌態を、冷めた目で眺めた。


胡坐に引き上げた小さな身体は、駆け巡る熱を吐き出そうと、我を忘れて淫らに腰を振る。


己の慾を満たすためだけに‥


薄暗い闇の中に白絹を纏ったような肌が薄く浮かび上がり、濡れた目が誘うように俺を捉えた。

だが、その目には俺の望むものは何も映してはいない。

ただ‥目の前にある束の間の夢を見ているかのような表情(かお)は、今まで見せてきたそのどれとも違う。



お前はその表情(かお)で、男を骨抜きにしてきたのか?

その淫らに蠢く肉壁で、男の物を虜にしてきたと?


‥‥ふざけるな。


俺がそんなものに誑かされるとでも思っているのか!



苛立ちを打つけるように突き上げても、淫慾にのみ支配されているしなやかな身体は、否が応でも俺をその中に引き摺り込もうと蠢き、一瞬妖しい幻を見せた。

そしてその幻のなかにまで引き摺り込もうとする白い手が首に掛かり、冷めている肩口に熱い吐息が吹きかけられる。



なんだ‥この男は‥‥

お前は一体‥‥



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