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愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】

第6章 籠鳥恋雲


僕はいつしか擦れて赤黒くなってしまった足首を、そっと摩った。


その時、僕はあの少年が去り際に言った一言を思い出した。


「兄さんが‥」


確かにそう聴こえた。


松本潤に年の離れた弟がいることは、和也が以前寄越した情報にも記されていた。


では、あの少年が潤の‥?


似ても似つかない容姿‥

それに、冷徹無比な兄に対して、あの弟は見るからに心根の優しそうな‥そんな印象すら受けた。


こんな頑丈な鎖‥手で引きちぎれる筈ないのに‥
なのにあんなに必死な顔をして‥


思い出しただけで笑いが込み上げてくる。


「ほう‥、今日は余程機嫌が良いと見えるな」


突然聞こえた声に、僕の背中が一瞬ぶるりと震える。


いつの間に‥


「お、おかえりなさい‥ませ‥。お早いお帰りだったんですね‥」


僕は静かに身体毎声のした方に向き直ると、肩にかけていた羽織を床に落とした。


そして氷のように冷たい手を取ると、大きく開いた襟元へと入れた。


「何をしている」

「何も‥。ただ、温めて差し上げたいだけですよ?」


僕はいつしか身に着けた、媚るような視線を、端正な顔立ちの男に向けた。

そんなことをしたって、この男には通用しないことを分かっていながら‥


「ふん、小賢しい真似を‥。ならば‥‥」


一瞬唇の端を不気味に釣り上げ、にやりと笑みを浮かべた潤の手が、僕の見上げた前髪を鷲掴みにする。


「ここも温めて貰おうか‥」


そのまま引き寄せられ、僕の顔が潤の股座に押し当てられる。


苦し‥
息が‥出来ない‥‥


「どうした?出来ないのか?」


やっぱり違う‥

この男が、あの心優しい少年の兄である筈がない。


「ふん、口程でもない」


何も出来ず、ただ息苦しさに耐えているだけの僕を、潤は掴んだ髪ごと引き剥がし、床へと叩き付けた。


「所詮お前は男に媚びることしか知らぬ、陰間と同じだ。俺を温めるだと?出来もしないことを‥」


僕が‥陰間だと‥?

この僕が‥


「悔しいか?悔しければ、心か俺を愛せと、この間から言っているのに‥」


床に叩き付けられ、起き上がれずにいる僕の身体に、潤が馬乗りになった。
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