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愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】

第6章 籠鳥恋雲


翔side


隠し階段か‥。

和也と話していて冗談で言ってみたものの、少し前から気になっていた物音が聞こえくるのが天井裏からのような気がして、ひょっとしたら、おれの知らない仕掛けがあるんじゃないかって思い始めていた。

この屋敷はおれが生まれる前に建てられたものだから、自分の住んでいるところとはいえ、全てを知っているというわけでもないし‥

特に父様や兄さんの部屋には、気安く入ったりすることなんてできなかった。


夕食を済ませ和也も部屋に戻ってしまい一人になったおれは、窓枠に凭れて、暗く静まり返った庭を眺める。

陽のある時分ならまだしも、夜の闇に鬱蒼と茂る木々は、不気味でしかなくて‥

「やだなぁ‥今夜は兄さんの帰りも遅いのに‥。」

広い屋敷の二階には自分一人だけかと思うと、年甲斐も無く心細くなってしまった。


もう寝てしまおうかな‥。


そう思って腰を浮かしかけたその時、

じゃら‥じゃら‥

という音と、ごそごそと何かが板の上を引き摺るような音が聞こえてくる。


な、何⁈

何の音⁈

ね‥鼠‥‥じゃないよね‥。


どう考えても小動物の足音とは違う物音に、胸が早鐘のように鳴りだす。

直に静かになった天井の一角をじっと見つめていたけれど、一度速まった鼓動が治まることはなくて‥

「兄さんの部屋の上あたりかな‥」

得体の知れないものがいるんじゃないかって怖さと、おれの知らない面白い仕掛けがあるんじゃないかっていう好奇心とが混じりあって、とんでもないことを考えてしまう。


ちょっとだけ‥

ほんのちょっとだけ、探ってみてもいいかな‥?

何も触らないければ、兄さんだって気がつくことは無いだろうし。


おれは白い漆喰塗のその場所を見て‥羽織りの前を合わせると、机上の橙色の灯りを手に自分の部屋を静かに出た。


静まり返った二階の廊下を、まるで泥棒か忍者のように足音を忍ばせて歩く。

暗い廊下に自分の影が揺れるだけでも背筋がぞくりと凍りそうなのに、踏んだ床がみしりと鳴って、飛び上がりそうになる。


やっぱり止めておこうかな‥


留守中に勝手に部屋に入ったことが兄さんに知れたら、それこそただじゃ済まされない。

「‥でも、気になって眠れないし‥。」

どうしても好奇心には勝てなかったおれは、小さい灯りを頼りに暗い廊下を進んだ。

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