• テキストサイズ

愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】

第5章 一栄一辱


一頻り二人で笑った後、坊ちゃんの願いもあって、夕食までの間、話し相手をすることになった。

普段なら忙しく働いてる時間なのに‥

こんなにゆっくりしたのは、あの人の屋敷以来だ。


「あ、あの、一つお聞きしたいんですが‥」

俺は思い切って切り出した。


「なんだろう、おれで分かること?」

「いえ、大したこたとじゃないんです。ただ、俺‥潤坊ちゃんのことが良く分からなくて‥その、お人柄というか‥」


俺の問に、目の前の翔坊ちゃんの目が丸くなる。


でもその目はすぐに細められて、小さく首を捻ると、

「どうして?そんなこと知ってどうするの?」


「澤さんの代わりってことは、当然潤坊ちゃんのお世話も‥ってことになりますよね?だからその‥」


一瞬見せた怪訝そうな顔に不安を感じた俺は、慌てて取り繕う言葉を並べた。


「ああ、なるほどね。そうだな、兄さんはおれにはとても優しいよ。でもね、おれ以外の人には、とっても厳しい面もお持ちだから、そこは気を付けた方がいいかもね。あ、あと、これはここだけの話なんだけど‥」


周りに人なんていやしないのに、俺の耳元に手をかざすと、とても小さな声で、


「真夜中に叩き起されることもあるみたいだよ?」

「真夜中‥ですか‥?」

「そんなだから、澤は倒れてしまったのかもしれないな」


そんなことが‥


「あ、でもおれが言ったなんて言わないでよ?俺も他の使用人が噂してるのを小耳に挟んだだけなんだから」

「え、ええ、勿論です」


俺は胸を拳で叩くと、壁にかかった時計に視線を向けた。


「そろそろ夕食の時間じゃ‥」

「本当だ。兄さんが呼びに来る前に、急いで着替えないと‥。和也、手伝って?」


見れば、坊ちゃんはまだ学生服のままで‥


俺は坊ちゃんの指示を受けながら、着替えの準備をすると、飲み終えた湯呑みを盆に乗せた。


その時、部屋の扉をこんこん‥、と叩く音が聞こえた。
/ 534ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp