愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】
第5章 一栄一辱
薄く形の良い唇に、そっと自分のそれを重ねる。
すると僕の取った行動に一瞬戸惑ったのか‥それともあまりの拙さに、心中で嘲笑っていたのか‥
「‥何の真似だ」
表情一つ変えることすらしなかった。
でも僕は臆することなく、指の先で触れた頬を撫でながら、
「僕は貴方を愛したい‥ただ、それだけのこと」
僕を見下ろす冷えた視線に、熱を宿した視線を絡めた。
「それがこの口付けだと‥?」
そう‥、だって僕は知らないから、愛なんて‥
愛がどんな物なのか、僕には想像もつかないから‥
触れるだけで‥悪戯に身体を乱されるだけで、何もくれないのなら、自ら奪いに行くだけ。
僕は頬に宛てた手を首筋へと滑らせ、着物の襟元から懐へと忍ばせると、もう一方の手でその戒めを解いた。
硬く冷たい板敷に膝を着き、戒めを解いた着物の前を開く。
「どうしようというのだ?」
驚いたことに、開いた着物の下には何も着けていなくて‥
試されてるんだ‥
その意図を察した僕は、遊女の如く微笑み(えみ)を浮かべて見上げ、男の程良く引き締まったその胸板に唇を押し当てた。
男の割には滑らかな肌を撫でながら、水音を響かせながら口付けを繰り返す。
男の欲情を煽るように‥
肌を撫でる手を中心へと滑らせ、その先の柔らかな茎を両の手で包み込み、ゆるゆると快感へと導いてやる。
「お前は、そんなものが欲しいのか」
欲しいよ‥、欲しくて欲しくて堪らないよ‥
「貴方の全てが欲しいと言ったでしょう?この身体も‥そう」
何もかもがね‥
僕は顔に微笑み(えみ)を浮かべたまま、両の手で包んだ茎に舌を這わせると、僅かに開いた唇の奥へと誘った。
そして熱くなり始めた慾の塊を口いっぱいに頬張り、拙い口淫を施す。
「そんなもの‥いくらでもくれてやる。その程度でよければな」
瞬間、それまで声色一つ変えることのなかった男が、小さな呻きを上げ、僕の口の中に欲情の証が吐き出された。
「‥っ‥げほっ‥げほっ‥っ‥」
初めて口にしたその味と臭いに、僕は激しく咳き込み、その場を這い回った。