第12章 伝える勇気
はるside
"ドンドンドン…"
と激しく玄関の扉を叩く音も…
「先輩……中にいるんでしょ…?
お願いですから
顔だけでも見せてくださいよ!?」
ドア越しに聞こえてくる松本くんの声も…
両手で耳を防いで
すべての音を遮断する…
真面目に風邪一つひかず
5年間働き続けた私には
そこそこたまった有給休暇があって
たまった有給を消化しているんだから
誰に何を言われる筋合いもない…
そっと両手を耳から離して
静かになった玄関に
ため息を吐き出し
パジャマのまま
ソファーにごろりと横になる…
今の私は正直
会社の人であろうと…
友達であろうと…
誰にも会いたくないんだ……
お隣さんに
愛想を尽かされてから3日がたっても
ぽっかり空いた心の穴は
ちっとも小さくならなくて
なんなら日に日に
痛みが増して穴は広がっていく
一方な気さえしてるんだから……(笑)
"会いたい……"
そう思うことさえ今は辛いから
出来ることなら
ずっと眠っていたいんだ…
だって夢の中ならお隣さんは
今までと変わらず
優しい笑顔を
私だけに向けてくれるから……