第10章 【blood】
「丁度よかったニック、聞いていたらな話は早い。そう言う訳だからパーティは辞た――」
「――辞退なんて絶対にしないわ。私たち、本当に楽しみにしてるのよ!」
「そうそう、さっきなんてパーティにどんな格好で行くか話してたところなんだよ」
「僕、招待してもらえて本当に嬉しいな。何て言ったって記念すべき500回目なんだしね!!」
クリスの口を、ハリー、ロン、ハーマイオニーの三人が一斉に飛びかかって塞ぎ込ませた。口を挟むどころか手さえ出せなくなってしまったクリスをよそに、3人は絶命日パーティがいかに楽しみで、招待された自分達は何て光栄なんだろうと口々に話し合った。どれだけの時間褒め称えたであろう、やっと機嫌を直したニックはクリスを抜かした3人に黄ばんだ招待状を手渡した。
「さよう、今回のパーティでは特に趣向を凝らしておりましてね。ええ、集まる知人方もそれはそれは豪華な有名人ばかりでして……如何でしょう“3人とも”私のパーティに来て頂けるでしょうか?」
「「「もちろんです」」」
「良かった。それではまた」
そう言うと、ほとんど首なしニックはクリスの目の前で残った招待状をびりびりに破り、紙吹雪とともに談話室の壁をすり抜けていた。ひらひらと舞い散る花吹雪が全て床に落ちると、クリスはやっと3人から解放された。
「何をするんだいきなり」
「それはこっちの台詞だよ!あんなことされちゃ断るのも断れなくなっちゃったじゃないか!」
「良いじゃないか、3人とも楽しみにしてたんだろ?」
「そりゃ、興味が無いわけじゃないけど……」
ハリーが言いよどむのも訳なかった。パーティが近づくにつれ、大広間はハロウィーン一色に染まり始めた。ハグリッドが育てたかぼちゃは馬車に出来るほど大きく成長し、今からどんな風にくり貫かれるのか想像するだけで楽しかった。他の生徒もハロウィーンパーティの噂ばかりしていたし、今年はなんと骸骨舞踏団を呼んでいるという情報まで入ってきていた。
これには流石のハリー達もハロウィーンを楽しみにしないわけにはいかなかった。しかし約束は約束だ。ハロウィーンパーティが始まる10分前、クリスは3人に別れを告げると1人意気揚々と大広間へ入っていった。