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ハリー・ポッターと純血の守護者

第10章 【blood】


「いいや!使えない!!こんなサインがあったら冷静に精霊達と交信なんて出来やしない!もうお仕舞いだぁ、召喚士は途絶えたのだ!母様、ごめんなさいいいいいいぃぃ」 

 情緒不安定気味に叫びだすクリスに、ハーマイオニーはふうっとため息をついた。これでも彼女は彼女なりに一緒になって図書館でサインを落とす方法を探したり、薬を作ったりと、クリスの手助けをしてきたのだが、クリスの機嫌は悪くなるばかりだ。それに出来ることなら、サインをそっくりそのまま自分の杖に移せればいいのにと何度考えたことか。恋に恋する乙女心が、運命の悪戯とはこのことかと告げていた。
 クリスがイスの上で泣き言を言いながら屈みこんでいると、パッと談話室の扉が開き、ずぶ濡れで泥だらけのハリーが入ってきた。雨の日だというのにチームのキャプテン、オリバー・ウッドはしごきとも呼べる練習を強行し、へとへとになったハリーは箒を杖のようにしてやっとの思いで帰ってきたのだ。ハーマイオニーは読みかけだった本を閉じた。

「お帰りなさいハリー、大丈夫なの?」
「大丈夫のような、大丈夫じゃないような。とにかく先に着替えてくるよ」

 寮に続く螺旋階段の手前で、偶然ハリーとジニーがぶつかった。「ごめん、濡れちゃった?」と謝るハリーに対し、何も言えないまま真っ赤になったジニーは女子寮へと続く螺旋階段を駆けて行った。その様子を見て、クリスは心がじんわりするのを感じた。今やこれだけがクリスの癒しである。

「いいなあ、私にも妹がいたらなあ」
「欲しけりゃあげるよ」

 イスの上で縮こまりながらまだぐずぐず言っているクリスに、魔法史のレポートに手こずっているロンが、顔も上げずに答えた。

「そんなこと言って、本当は手放したら寂しがるくせに。良いんだ、どうせ独りぼっちなんだ私は」
「誰がそんなこと。うちには他にもうじゃうじゃいるんだよ。どっからでも好きなのをあげるよ」
「あ、でもフレッドとジョージはいらない」
「「なんだってぇーー!!」」

 丁度その時、フレッドとジョージがハリー同様、ずぶ濡れになって談話室に入ってきたところだった。相変わらずのテンションの高さとステレオボイスに、それがいらない要因の一つだとクリスは思った。
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