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ハリー・ポッターと純血の守護者

第10章 【blood】


 それから暫くの間、クリスの機嫌は右斜めに下がりっぱなしだった。召喚の杖にキラキラと輝くライラック色のロックハートのサインは消えるという事を知らず、布で擦ってもだめ、薬品を使ってもだめ、魔法を使ってもだめの3段階で、まるでクリスの堪忍袋の尾がどこで切れるのか試しているかのようだった。
 しかも当のロックハート本人はいつクリスから感謝の声が聞けるのか、時々こちらを伺っては目配せしてきたので、クリスの血圧は上がる一方だった。
 どこからうわさを聞きつけたのか、フレッドとジョージの2人がナイフで綺麗に削ってやろうかと申し出てきたが、召喚の杖に傷つけるわけにはいかず一応気持ちだけ受け取っておくことにした。しかしそれも最後の手段として考えねばならなくなってきた。1ヶ月が過ぎ、ハロウィーンの季節がやってきてもサインはたった今施されたようにキラキラと輝いていた。

「まるで呪いだ、これはロックハートの呪いなんだ」

 ハロウィーンを間近に控えたある日の夕方、クリスは虚ろな目をしながら囁いた。暇さえあればゴシゴシ、授業中にも先生の目を盗んではゴシゴシ、大広間での食事中にもゴシゴシ、移動教室の最中でさえゴシゴシゴシゴシと杖をぬぐっている姿を見て、誰が名づけたかグリフィンドールのアライグマとさえ呼ばれるほどクリスは病的になってサインを消そうと没頭していた。

「クリス……言いたくないけど、諦めたらどう?」
「諦める?今諦めると言ったのかハーマイオニー?この私に諦めると!」

 1ヶ月のこの苦労を見てみろといわんばかりに、クリスは擦り切れたハンカチを差し出した。元は純白でレースの縁取りのされていた上品なハンカチが、今やぼろ雑巾同然の姿に変わっていた。それはまるでクリスの姿の様でもあった。それもそのはず、連日徹夜での除去作業に、目の下にクマをつくったクリスの体力は限界に近づいていた。

「そりゃ君はいいだろうさ!憧れのロックハート様様のサインなんだから。でもこっちからしたらたまったもんじゃない!汚点だ汚点、我が家の恥だ」
「でも、サインがあっても召喚術は使えるんじゃないの?」
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