• テキストサイズ

ハリー・ポッターと純血の守護者

第9章 【心の声】


 それからの時間はどうやって過ごしたのか分からないほど、午後八時は目の前に迫ってきていた。フィルチやロックハートを引き当てたロンとハリーほど惨めではないが、相手はあのマクゴナガル先生だ。生易しい罰で終わるわけがない。
 3人は8時10分前になると、お互いの健闘を祈りつつそれぞれ決められた場所へと足を運んだ。
 クリスにしてみれば、今日は人生の中でもベスト10に入るほど不幸な日だった。最愛の母から受け継いだ召喚の杖を、顔だけが自慢の能無し教師に奪われ、おまけに厳格さで知られる副校長直々の処罰。一体どんな処罰が来ようと、これ以上不幸な目に会う事は無いだろうと思っていたのだが、その考えが甘かったことはすぐに照明される事になった。

「先生、クリス・グレインです」
「お入りなさい」

 沈んだ面持ちでマクゴナガル先生の部屋の扉を叩くと、すぐに厳格そうな声が返ってきた。しぶしぶ部屋の戸を開けると、執務室の中心でマクゴナガル先生が厳しい顔をして立っていた。

「ミス・グレイン。これから何があろうと取り乱さないと約束できますか?」
「えっ?」
「もう一度言います、何があろうと取り乱さないと約束できますか?」

 イエス以外の言葉を許さない重圧な声でそう言われては、クリスだって首を縦に振らざるを得ない。クリスの了解を得ると、マクゴナガル先生は大きなため息とともに部屋の奥に一瞬消え、召喚の杖を持ってクリスの前に帰ってきた。思わずクリスはあっと声を上げた。

「先ほど、ロックハート先生が私の所にもって来ました。貴女、これを呪いの杖と言ってロックハート先生をからかったそうですね」

 痛いところをつかれ、クリスは言葉に詰まってしまった。無言を肯定ととったのか、マクゴナガル先生は眉間にこれでもかと言わんばかりのシワを寄せると、もう一度大きなため息をついて長々と説教をはじめた。

「良いですか?これは貴女のお母様が生前から大事にしていらした、世界にまたとない貴重な杖です。いえ、貴女のお母様だけではありません。長い年月、貴女の一族が誇りを持ってこの杖を守ってきた大変価値のあるものです。それを呪いの杖などと言って教師をからかうなどもっての外です」
「……仰るとおりです」
/ 294ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp