第9章 【心の声】
再び怒りに燃えるクリスに男2人はあきれたようにため息をついた。
「馬鹿だね、君も。そんなんじゃロックハートにエサを与えたようなものじゃないか」
「騒ぎあるところにロックハートあり、だよ」
「失礼ね、先生はクリスの嘘にもご好意を示してくださったのよ」
感謝こそすれ、怒るなんてお門違いだわと言うハーマイオニーに、クリスは召喚の杖が自分にとってどれほど大事なものか延々と語って見せた。しかしハーマイオニーにしてみれば、クリスの失礼な態度こそ改めるべきだと考えていて「そんなに大事ならタンスの奥にでもしまっておきなさい」と言うハーマイオニーに、クリスは震える手で杖に手をかけた。
「クリス、ストーップ!」
「ここじゃ場所がまずい、マクゴナガル先生だ!」
見ると城の入り口にマクゴナガル先生が立ってこちらを向いていた。クリスはとっさに杖をしまうと、手招きしているマクゴナガル先生に従い小走りで城に向かった。
「探しましたよ、ポッター、ウィーズリー、グレイン。今日の午後八時から処罰があります」
マクゴナガル先生はグリフィンドールの寮監でもあるのだが、だからと言って処罰を軽くしてくれる先生ではないことを去年1年間で嫌と言うほど学んできた。処罰と聞いて、ハリーとロンはずーんと顔を暗くした。反面、クリスは自分が何故処罰の対象になっているのか分からずポカンとしていると、マクゴナガル先生が「ロックハート先生の答案の件です」と厳しい顔で答えた。
「ウィーズリー、貴方はフィルチさんの所へ。ポッターはロックハート先生の部屋へ。クリスは私の部屋へ来なさい。午後八時に、きっかりですよ!」
それだけ言い残すと、マクゴナガル先生は大広間の方へ去っていってしまった。なんと、あの答案を本当にマクゴナガル先生に進言したのかと思うと、クリスは言葉が出てこなかった。パクパクと口を開くクリスの隣で、ハーマイオニーが当然と言う顔をしているのが気に食わなかった。
ハリーもロンもお互い言いたい事がありそうだったが、ハーマイオニーの顔を見て何も言えずマクゴナガル先生の後姿をじっと見つめていた。