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ハリー・ポッターと純血の守護者

第9章 【心の声】


「これ、太らせ魔法じゃない?難しい魔法じゃないけど、とても良くやったわねハグリッド」
「まったく、ハーマイオニーには適わねえなあ」

 一目で見破られたグリッドは誤魔化すように頬をかきながら小さく笑った。本当ならハグリッドは魔法を使ってはいけないことになっている。何故か知らないが、以前ハリーがそう言っていた。

「お前さんの妹も昨日これを見に来てなあ。ビックリしとったわい」
「ジニーが?あいつ何しに来たんだ」
「そこら辺を散歩し取るといっとったが、ありゃあ俺からすると……誰かさんにばったり会えるのを期待しとったみたいだなあ」

 チラリとハグリッドはハリーを見た。その途端、クリスは自分の顔がにやけるのを感じた。ジニーといえば、毎日大広間で会う度、顔を真っ赤にして下を向いてハリーの前を早足で素通りしてしまうのだが、食事の最中こっそりこちらをうかがっていることにクリスは気づいていた。
 声を掛けたいのに掛けられない小さな乙女心を、クリスはひそかに応援していたのだが、ハリーは困ったような少し不機嫌な顔をしてクリスを睨み付けた。

「クリス、今度僕の前でそんな顔したら――」
「分かってるさ、でもこればっかりは仕方ない」

 ぜんぜん分かってないクリスを見て、ハリーは大きくため息をついた。ハリーにしてみればロックハートにコリン・クリービーときて、ジニーにまで追いかけられたらたまったものじゃない。どうにかクリスがジニーに発破をかけない様にしてもらいたかったが、この様子だと時間の問題だと不安に駆られていた。

 そろそろ昼食の時間だと、ハリーのお腹が大きな音を立てると、4人はハグリッドの小屋を後にした。校庭から城に入る途中、今更ながらにハリーがクリスに疑問を投げかけた。

「そういえば、ロックハートが君の召喚の杖を持って走って行ってたけど、何かあったの?」

 実はこの3人、茂みに隠れて1部始終を目撃していたのだが、ロックハートと係わり合いになりたくないあまりクリスの大切な召喚の杖が持ち去られていくのを黙ってみていたのだった。そんなことは露知らず、クリスは待っていましたと言わんばかりに、ロックハートの奇行を身振り手振りを沿えて大仰に伝えた。
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