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ハリー・ポッターと純血の守護者

第9章 【心の声】


「良いから手・を・放・し・な・さ・い」
「放・す・も・ん・かぁ~」
「いい加減止めねえか、おめえら!」

 見るに見かねて、ハグリッドがクリスとロックハートを引き離した。その瞬間、ついに杖はクリスの手から放れロックハートの手中に収まってしまった。クリスがとっさに飛びかかろうとしたのを、ハグリッドの大きな手がまるで狂犬を取り押さえる飼い主のようにクリスを押さえ込んだ。
 突然引き離されてしりもちをついたロックハートは、召喚の杖を手に入れると、まるで聖剣エクスカリバーを手に入れたアーサー王のように杖を高々と掲げた。

「御覧なさい、これでもう安心ですよ!私に任せれば、午後にはもう杖に取り付いた邪悪なる魔王の呪いを解いて差し上げましょう!!」
「ふざけ――んがんぐ」
「ああ分かった、分かったからさっさと用事が済んだなら帰ってくれ」

 じたばた暴れるクリスを取り押さえながら、ハグリッドはハエを追っ払うようにシッシッと手を振った。勝敗はロックハートに上がり、最後に「助けてほしいことがあったらまた私を頼りなさい。ああっという間に解決してご覧に入れましょう」と言い残すと、得意のチャーミング・スマイルをきめ、意気揚々とハグリッドの小屋を後にした。
 ロックハートが城に入ったのを十分確認すると、ハグリッドはやっとクリスを放してくれた。

「なんて事をしてくれたんだハグリッド!!あれは母様から譲り受けた大切な杖なんだぞ!それをあんな腐れ教師に手渡すなんて!!」
「ああでもしなきゃ、奴はここから出ていかんかっただろう。心配せずとも、あんな奴にゃ召喚の杖に傷一つつけられるもんか」
「当たり前だ!もし傷一つつけてみろ、そのときは――」

 クリスの言葉をさえぎるように、ハグリッドの小屋の戸が慌しく叩かれた。反射的に扉を睨み付けるクリスに代わり、ハグリッドが扉を開くと、ロンを抱えたハリーとハーマイオニーがなだれ込むようにして入ってきた。2人に抱えられたロンの顔色は相当悪く、ウッと小さくうめくと口からポタポタとナメクジを吐き出したので、思わずクリスは一瞬にして怒りを忘れてしまった。

「やっと来たのか、待っとったぞお前さんたち。ところで、ロンはどうした?」
「マルフォイに呪いをかけようとしたら、杖が逆噴射しちゃったんだよ」
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