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ハリー・ポッターと純血の守護者

第8章 【嵐を呼ぶオトコ】


「ミ、ミス・クリス……あなたは残念ながら、私のことを大いに誤解しているようだね。――よろしいでしょう、このことはマクゴナガル先生と相談の上、今後のことを決めましょう」

 もっと面白いことを期待していたクリスにしてみれば、これはちょっとした誤算だった。クリスが席に着くと、何のことだか知りたいハリー達が一斉にクリスに詰め寄ったが、クリスは「あとでのおたのしみ」とだけ言って、唇に指を当てた。

 問題だらけのテスト問題が終わると、ロックハートは覆いにつつまれた鳥かごのようなものを教卓に置いた。暗い覆いの中で何かがうごめいているのが、教室のすみにいても分かるくらいだ。教卓のまん前に座っていたディーンとシェーマスなんか、のけぞる形で少しでもその鳥かごから身を反らそうとしていた。

「さあ、今日ここにつれてきたのは紛れもなく、魔法界でも随一を争う暴れん坊ばかりです。良く注意してください、出なければ皆さんの五体満足は信用できかねません。しかし心配は要りませんよ!皆さんが私のお手本を良く見て、注意深く接していれば、私の目の黒いうちは皆さんに危害を加えることは決してないでしょう!!」

 黒い覆いの中に、誰しもの目が引き付けられた。あのハリーでさえ、高く積み上げた本の隙間から鳥かごの中をのぞこうとしている。教室中の緊張が十分に高まったところで、ロックハートはバッと勢い良く覆いを取り外した。

「これぞ!コーンウォール地方のピクシー妖精です!!」

 その瞬間、教室中から一瞬笑い声が漏れた。あれだけ人を期待させておいて、出てきたのは羽根の生えた小人が30匹ほど、キーキー、鋭い声と爪で一生懸命威嚇しているだけだった。

「侮ってはいけませんよ、こいつらはこの鋭い爪で持ってあなた達の目玉すら引き裂きかねない」

 と、言われても、これでは生徒たちの失笑を買うに十分だった。ピクシー妖精は身長が20cmほどしかなく、甲高い声でキャンキャンしゃべりながら籠をガチャガチャいわせたり、近くの生徒に舌を出していたずらしたり、歌を歌ったり、これなら1時間目にやったマンドラゴラのほうがよっぽど危険で『魔法界でも随一を争う暴れん坊』に近かった。
 生徒たちの反応に満足いかなかったのか、ロックハートは仰々しく咳払いをして見せた。
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