第7章 【有名人の憂鬱】
再び鉢の準備を終え、やっと植替え作業に入ろうとマンドレイクの苗を引っこ抜いてクリスは驚いた。スプラウト先生はいとも簡単そうにやっていたが、引き抜かれたマンドレイクは力の限り暴れてなかなか手がつけられない。それでもなんとか鉢に押し込もうと格闘していると、向かいのハリーが突如クリスの名前を叫んだ。
「……クリスッ!!」
声が聞こえた時点で、もう遅かった。再び背後から忍び寄っていた毒触手草が、クリスの耳あてにツルを絡ませ一瞬の隙を突いてそれを奪い取った後だった。
とたんに耳に入るこの世の者とは思えない叫び声に、クリスは声を上げる間もなく意識を失った。
* * *
目が覚めると、クリスは医務室のベッドの上にいた。後頭部が痛いのは倒れたときぶつけた所為だろうか。時計を見ると、もうすぐ昼食の時間だということに気づいた。
「あれからかなり時間が経っているんだな」
改めて声に出して、クリスは自分の情けなさに落ち込んだ。新学期初日の、それも始めの授業で気絶するなんてホグワーツでも前代未聞のはずだ。ベッドの上でひざを抱えていると、マダム・ポンフリーがやってきて簡単に身体の検査を始めた。例え苗といえどマンドレイクには十分な注意が必要で2年生がやる教材ではないと、ぶつぶつ文句を言っていたが、空いたベッドは他に気絶者がいなかった証拠だ。クリスはますます自分が情けなくなった。
検査が終わると、クリスは直接大広間へ向かった。出来ればあまり人前には出たくないのだが、朝食すらとっていないのにその上昼食を抜くのは辛い。だが、その考えは間違いだった。
「あぁ~ら、そこにいるのはクリス・グレインじゃない?」
大広間の扉の前で、クリスは今1番会いたくない連中と顔をあわせてしまった。右からクラップ、ゴイル、ドラコ、そして憎たらしげな笑みを浮かべたパンジー・パーキンソンだ。
「驚いたわ、どうしてこんな所にいるのかしら?たしか貴女は1時限目にマンドレイクの“植替えに失敗して”医務室に運ばれたんじゃなかったのぉ?」
「止さないか、パンジー」
「あらどうして、私は本当のことを言っているだけよぉ?ねえ、クリス」