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ハリー・ポッターと純血の守護者

第7章 【有名人の憂鬱】


 先生に指される前に、ハーマイオニーがすばやく右手を上げ答えた。グリフィンドールではお馴染みの光景だったが、初めて目にするそのあまりの速さにジャスティンは目を丸くして、上げかけた手をひそかに下ろした。

「良く出来ました、グリフィンドールに10点。それでは実際に植え替えの手本を見せますから、みなさん一人ずつ耳あてを着けてください」

 言われたとおり生徒全員がモコモコの耳あてを装着すると、スプラウト先生は深緑の草を根元からつかみ、一気に引き抜いた。グロテスクな人形サイズの苗が、逃れようとジタバタ暴れている。次に用意してあった植え替えようの鉢にマンドレイクを押し込むと、素早く土をかぶせてから生徒に耳あてを外すよう指示した。

「ここまでが一連の流れです、作業中は絶対に耳あてを取らないこと。このマンドレイクはまだ苗なので死にいたるには及びませんが、それでも皆さんを数時間気絶させる力を持っています。それと“毒触手草”には気をつけてください、歯が生えてきている最中ですから……では作業を始めてください」

 生徒たちはまず堆肥の用意から始めた。黒く湿った土は爪の間に入り込んで落とすのに毎回苦労させられるので、クリスはこれがあまり好きではない。シャベルで少々乱暴に鉢に黒土を盛っていると、知らず知らずの内に背後から忍び寄っていた毒触手草のツルが、準備を終えたばかりのクリスの鉢をひっくり返した。

「あ゛ーーー、もうっ!!腹が立つ!」

 クリスはここぞとばかりに力の限り叫んだ。一部始終を見ていたハリー達は、哀れむような目で空になった鉢を見つめた。クリスが腹いせにツルを引きちぎってやろうと振り返ると、毒触手草は素早くツルを引っ込めまるで挑発するように揺れている。
 それを見て完全に頭にきたクリスは、剪定バサミを持って毒触手草に近づいたが、ハーマイオニーがスプラウト先生の方を見やり、首を横に振ってそれを引き止めた。
 声は聞こえなくとも、言わんとしている事は伝わる。それにせっかくハーマイオニーが稼いだ10点をわずか3分でご破算にするわけにもいかず、クリスはおとなしく作業に戻った。しかしその後、クリスは触手を切らなかったことを後悔する羽目になる。
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