第7章 【有名人の憂鬱】
ロックハートの話を無理やりさえぎるように、スプラウト先生はあらん限りの大声で生徒を温室に向かわせた。ぞろぞろと温室に入る生徒たちの中で、後ろ髪引かれまくっているハーマイオニーは中々そこを動こうとはせず、クリスが声をかけても曖昧な返事を繰り返すばかりだった。
「ほらハーマイオニー、授業が始まるぞ」
「ええ、分かってるわ……分かってるんだけど……あっ!」
「ちょうど良かった!君を探していたんだよ」
入り口付近でもたついている4人の所に、ロックハートが親しげに近寄ってきた。ハーマイオニーは傍目にも分かるほど緊張して背筋をピッと伸ばしたが、残念ながらロックハートの手は彼女ではなくその隣に立つハリーの肩に伸びてきた。
「ハリー、君に話があるんだ。……なに、そんなに時間はとらせないよ。ですからスプラウト先生、少しの間彼をお借りしてもよろしいですね?」
先生はもちろん、ハリーの意思すら無視してロックハートは瞬く間にハリーを物陰に連れて行ってしまった。しかたなく、クリスとロンは落ち込むハーマイオニーを連れて温室に入ると、中にはスプラウト先生が朝のうちに用意したであろう鉢植えと耳あてが作業台の上におかれていた。
生徒たちはそれを興味深そうにそれを手にとったり眺めたり、いつもながらにぎやかな雰囲気が漂っている。それを見たハーマイオニーもとっさに頭を切り替え、たちまちいつもの調子で真剣に鉢植えを観察しはじめたので、クリスとロンは視線合わせると、同時にため息をついた。
「やあ」
作業台の上に注意を引かれていたクリスたちは、男の子が向かいにいたことに気づかなかった。声をかけられて顔を上げると、髪の毛が軽くカールしたハッフルパフの男の子がにこやかに挨拶をしていた。その時クリスは初めて今日からハッフルパフとの合同授業だと言うことに気づいた。
「こんにちは。僕はジャスティン・フィンチ・フレッチリーです。グリフィンドールとの合同授業で、君たちとご一緒できるのを楽しみにしていたんですよ」
少し硬い表情だったが、ジャスティンは笑顔で手を差し出してきた。去年の賢者の石をめぐる一件以来、ハリーはもちろんクリスたちも一躍時の人となったおかげで、3人の知名度は一気に上昇していた。3人の手をとり、ジャスティンはもう一度明るい声で答えた。