第1章 The summer vacation ~Draco~
クリスに言われて夜空を眺めてみたが、特に何も願い事なんで浮かばない。それに願い事なら、星に願い事をかけるより自分の両親に頼んだ方がよっぽど確実だ。
マルフォイ家の子息が、万が一の可能性にかけなければならないほど不自由な思いをしているわけがない。ドラコは鼻で笑った。
「はッ、下らない。第一流れ星に願い事をかけたところで、本当に叶うわけがないじゃないか」
「夢がないなあ、お前は。仕方がない、私が代わりにドラコの分のお願いもしておいてやろう」
「そんなの必要ない。僕なら星に願わなくっても自分でどうにかしてみせるさ」
「ムキになるなよ。たんなる遊びだよ、あ・そ・び。そうだな……『ハーマイオニーよりいい成績がとれますように』っていうのはどうだ?」
途端に、ドラコの額に青筋が浮かぶ。
どうして星を見ていない彼女は、こんなにも生意気なんだろう。苦虫を噛み潰したようなドラコの表情を楽しんでいるのか、クリスは唇の端を曲げてニヤリと笑った。
「帰ってきて早々、それでおじ様に大目玉を喰らったらしいから丁度いいじゃないか。それとも『ロンより身長が高くなりますように』にするか?もしくは『来年度はドラコもクィディッチチームに入れますように』とか」
「ふざけるなよ、それこそ僕には必要ない。今度のクィディッチ選抜では必ずシーカーに選ばれて見せるさ。ポッターのようにバカな傷があって有名だからとか、そんな理由を抜きにしてね」
「別にハリーは有名だから選ばれたわけじゃないぞ、実力があったからだ」
「それじゃあ、僕に実力がないって言いたいのかい?君が――よりによって飛行術ではロングボトムにすら劣る君がねぇ」
「スリザリンは皆いい体格してるから、少なくともお前の貧弱な体じゃ無理だな」
いつの間にか、売り言葉に買い言葉の嫌味合戦になっていた。元々引く事を知らない負けず嫌いの2人にとって喧嘩は日常茶飯事では、まだまだこれくらいの言い合いでは喧嘩のうちにも入らない。むしろ丁度いいスキンシップだ。
口元に薄ら笑いを浮かべながら嫌味の応酬を続けるドラコとクリスだったが、ふとドラコの脳裏に名案が浮かんた。
「上等じゃないか、そこまで言うなら賭けをしよう。ルールは単純だ、僕が今年シーカーに選ばれたら僕の勝ち、もし僕がシーカーに選ばれなかったら君の勝ちだ」