第6章 【Opening】
「つまりハーマイオニーは、ハリーとロンが空飛ぶ車ごと学校につっこんだって言いたいのか?」
「そう考えるのが妥当じゃないかしら?現にあの2人は今ここにいないわけでしょう。きっとダンブルドア先生だって、犯人が分かっているからこそ私達を避難させないんだわ」
「とすると大変だ。下手したら大怪我を負ってるかもしれないぞ」
あの物音で、無事では済むまい。一転してあせるクリスとは対照的に、ハーマイオニーは未だに2人への怒りと心配の狭間で揺らいでいた。眉間にしわを寄せ、難しい顔で組分けを睨みつけている。
「ハーマイオニー、気持ちは分かるけど今は怒っている場合じゃないぞ」
「…………」
「……ハーマイオニー!」
「分かった、分かったわよ。このあと医務室に行ってみましょう。でも、まだ2人を許したわけじゃありませんからね」
まったくもう、とハーマイオニーはむくれて見せたが、本当は誰よりもハリーとロンを心配しているのは彼女だ。膨れっ面の顔を見て、クリスは得意の笑いを必死に隠した。
そんな会話をしている間に、組分けはとうとう最後のジニーを残すのみとなっていた。マクゴナガル先生が名前を呼ぶと、まだ決まってもいないのにグリフィンドール席から早速歓迎の声があがった。
ジニーは泣き出しそうなほど顔を真っ赤にさせると、急いで3本足のスツールまで行き、顔が全部隠れるほど深く帽子をかぶった。
まるでロンの組分けを再現しているようで、クリスとハーマイオニーはつい顔を見合わせて笑ってしまった。しかし兄の時とは違い、ジニーの組分けは直ぐには終わらなかった。てっきり即決するとばかり思っていたのだが、帽子がグリフィンドールの名前を叫んだのはそれから10秒ほど経ってからのことだった。
「なんかちょっと、時間がかからなかった?」
「まあ、でも1分もかかってた子に比べれば全然早い方じゃないか」
ジニーの兄達も、その事はまったく気にしていないようだった。よろよろとグリフィンドール席にたどり着いたジニーを手放しで褒め称え、ジニーはますます顔を真っ赤にさせていた。本人からすれば堪ったものじゃないだろうが、彼女が普段どれほど兄妹達から愛されているかがよく分かる。クリスにしてみれば、ある意味羨ましい光景だった。