第6章 【Opening】
リストを広げ1番目の生徒の名前を呼ぼうとした、その瞬間、これまで聞いた事もないほどけたたましい衝撃音が校庭の方から響き、大広間全体を包み込んだ。
今年も式に出られなかったピーブスが起こした悪戯にしては、少々度が過ぎている。昨年トロールが城内に入り込んだ時でさえ、これほど大きな音はしなかったはずだ。これは、何かがおかしい。
一瞬の静寂の後、不安に駆られた生徒たちは動揺を隠し切れずどよめき合った。大広間の中心ではマクゴナガル先生が必死になって新入生を落ち着かせようとしているが、不安を肌で感じ取った彼らはパニック寸前で今にも泣き出しそうになっている。
そんな誰もが予想だにしていなかった混乱の中で、事態をいち早く収拾したのは――もちろん他の誰でもない、アルバス・ダンブルドアその人だった。
「諸君、まずは落ち着こう。こういう場合は冷静さを欠くと思わぬ惨事を引き起こしかねない」
トロール事件の時と同じく、職員席の真ん中に座っていたダンブルドアの杖から破裂音が飛びだし注意をひきつけた。それだけで、場内は驚くほど静けさを取り戻した。
「原因を突き止めるため、スネイプ先生が既に現場に向かっているはずだ。もし何かあれば――わしの予想だと大した事はないだろうが――直ぐに知らせが来る。それまでは、組分けの続きをしようではないか。残念ながらそれが終わらんことには、諸君らの待ち望んでいるご馳走も出てこんぞ?」
校長の穏やかな声に、生徒達は不思議と安心感を憶えた。そしてなにより、ホグワーツ特急の中から既に空腹に耐えていた彼らにとって、最後の一言は効果てきめんだった。歓迎会のご馳走を前に、たちまち在校生の心はひとつになった。
マクゴナガル先生が仕切りなおすように咳払いをひとつ入れると、組分けはまるで何事もなかったかのように進行した。1人減り、また1人減り、順調に進む組分けを見ながら、ハーマイオニーがポツリとつぶやいた。
「どう思う?」
「何が?」
「さっきの衝撃よ。私が思うに、きっとあの2人が絡んでるんじゃないかしら」
割れるような拍手が鳴り響く中で、クリスは淡々と2人の状況を思い描いてみた。するとたいした根拠もないのに、厄介ごとを引き起こして途方に暮れるハリーとロンの姿が、ありありと浮かんでしまったのは、多分2人の日ごろの行いのせいだろう。