第5章 【青空の旅】
「そうやってニヤニヤしないの」
「なんか微笑ましくて。ハーマイオニーのロックハート病と比べると実害がない分余計そう思う」
「なんですっ――…」
その時だった。突然、コンパートメントの外が騒がしくなり、見ると何人もの生徒が廊下に出て何やら空を指差している。悪い予感がして、クリスはすぐコンパートメントを飛び出した。それにつられるようにして、ハーマイオニーとジニーも後に続く。
廊下に出てすぐ、クリスはルームメイトのパーバティとラベンダーの姿を発見した。
「なあパーバティ、何があったんだ?」
「あっクリス、ちょうど良い所に!いま空飛ぶ車を見たって子がいてね、列車中その話で持ちきりなの。しかも噂によると乗っていたのがハリーとロンだったって言うのよ!」
クリスの背後で、ジニーが息を呑むのが分かった。やっぱり、空飛ぶ車は幻覚なんかじゃなかったのだ。騒ぎが騒ぎを生み、コンパートメントから続々と生徒が顔を覗かせ始める。雲の隙間に水色の眩しいフォード・アングリアが姿を現すと、生徒は野次馬と化し一斉に声を上げた。中にはご丁寧に双眼鏡を持ち出している人までいる。クリスはそれを半ばひったくるようにして取り上げた。
「悪いがちょっと借りるぞ!ジニー、あの車に見覚えはあるか?」
「やだ…うそ……あれ本当にパパの車だわ。でもどうして?ママが許してくれるはずないのに」
つまり2人は無断でウィーズリー氏の車を拝借し、何を考えているのかこんな目立つ方法でホグワーツに向かっているのだ。頭を抱えるクリスの隣りでは、ハーマイオニーが信じられないと言う風に大口を開けている。