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ハリー・ポッターと純血の守護者

第5章 【青空の旅】


 生粋の魔法界育ちのクリスだって、それが常識外れだということは百も承知だ。クリスは頭を振り、もう1度確かめようと空を目が皿になるほど見つめたが、自動車どころか自転車だって見つからなかった。当たり前だ。目の前に広がるロンドンの道路ならまだしも、この青空の中を車が走っているわけがない。
 しかしノクターン横丁での一件を思い出し、どうも嫌な予感がするクリスは、それから何度も窓の外を確認した。だがあれ以来、空飛ぶ車なんて影も形も見当たらないまま、数時間が過ぎた。

 お昼を少し過ぎたころ、車内販売の魔女がお菓子とジュースをいっぱい詰めたカートを押してやってくると、クリスは少し考えた末に3人分のお菓子を奮発して買った。沈んだ気分のときは、甘いお菓子を食べると気分が変わる気がする。しかも女の子同士ならなおさらだ。
 その効果があってか、全て食べ終わるころにはジニーも大分落ち着きを取り戻していた。やっと笑顔が戻ってきた事に安心しながら、クリスはもう何度目か分からぬ空をふと見上げた。

「……ねえ、さっきから外を気にしてるみたいだけど、何か見えるの?」
「え?いや、そういう訳じゃないけど」

 向かいの席でハーマイオニーとおしゃべりをしていたジニーが不思議そうにたずねてきた。不意に話しかけられて、一瞬戸惑うクリスだったが、まさか「空飛ぶ車を」探していたなんて言えない。

「少し考え事をしていただけだよ。――ハリー達は今頃何してるのかな、と思って」
「貴女も結構心配性ね。2人だけならまだしも、おじさんとおばさんも一緒なんだからそんなに心配しなくても大丈夫よ」
「そうなんだけどな。ハリーって時々何をしでかすか分からない時があるだろう……だから、どうしても気になるんだ」

 そう言って、クリスは少し目を伏せた。
 ハーマイオニーが言っている事は分かるのだが、どうもさっきからノクターン横丁での出来事が頭から離れない。それにあの夢――ハリーとロンに何かがあった事の暗示だろうか。
 再び窓の外を見やるクリスだったが、ふと、ジニーの視線に気づいて顔を戻した。

「何か用かな、ジニー」
「ちょっと聞いても良い?あの……クリスって……ハリーの事どう思ってるの?」
「――うん?」
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