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ハリー・ポッターと純血の守護者

第5章 【青空の旅】


 どこを探しても見つからないので、仕方なくクリス達は自分のコンパートメントに戻ってきていた。初めてのホグワーツ特急で早速問題に巻き込まれてしまったジニーは、不安と混乱で冷静さを完璧に失い、ハーマイオニーがそんな彼女を一生懸命宥めている。
 その向かいの席で、クリスは腕組みをして思案に暮れていた。見かけだけは冷静ぶっているが、怯えるジニーを余計不安にさせたくないから虚勢を張っているだけで、頭の中は軽いパニックになって考え事などまるでまとまらない。
 それはハーマイオニーも同じだった。ジニーにかけた言葉は、自分に言い聞かせるための言葉でもある。そうでなければ頭のいい彼女が案の一つも打ち出せないわけが無い。

「とりあえず、学校に手紙を送っておこうか。――ネサラ!」

 月並みだが、今はそれくらいしか考え付かない。クリスが一声かけると、ネサラが座席の手すりに降り立ち器用に片足を差し出した。トランクから羊皮紙と羽ペンを取り出し、事情を簡単に走り書きすると、その足にしっかり結びつけた。

「出来るだけ急いで学校まで飛んでいくんだ、それで向こうに着いたらマクゴナガル先生に――」

 その時クリスの脳裏に、青筋を立てたマクゴナガル先生に叱られるハリーとロンの姿が浮かんだ。詳しい理由はさて置き、始業式が始まる前から遅刻なんて先生が許すだろうか。下手したら全校生徒の前でさらし者、なんて事にならないとも言い切れない。それは流石に可哀想だ。

「マクゴナガル先生だけには届けるなよ、わかったな?」

 ネサラの小さな頭がしっかり頷いたのを確認してから、クリスは窓を開けた。9月と言えどまだ陽気は夏に近い。ぬけるような青空の中に黒い翼を広げたネサラが飛び立つのを見つめながら、クリスは開け放した窓から入る夏の風に、一瞬だけ騒動の事を忘れてしまった。

(いい風だな……)

 ネサラの飛んでいった空を見ながら、そんな事を思ったときだった。夏の青い空と白い雲の間に、同じく青空のように澄んだ色のマグルの車が飛んでいる――驚きのあまり、クリスは言葉を発することも出来ず弾かれたように車窓につめよった。

「クリス、突然どうしたの?」
「……いいい今、空に……いや、なんでもない。たぶん見間違いだ」
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