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ハリー・ポッターと純血の守護者

第5章 【青空の旅】


 見るに見かねて、フレッドが列車から飛び降りた。小さな黒い手帳は雑踏に紛れ込み、どんどん人ごみのほうへ押し流されてゆく。ウィーズリー夫妻が人ごみの向こうからフレッドとジニーに列車に乗るよう叫んだが、フレッドはジニーだけを無理やり押し返して列車に乗せると、自分は手帳を拾いに走った。
 見ているだけなのに、クリスは焦りと緊張で口から心臓が飛び出そうだった。隣にいるハーマイオニーもパーシーも、何も出来ず固唾を呑んで見守っている。しかしクリス達の都合など知る由も無い列車は、ガタンと1度大きく揺れたかと思うと、ついにフレッドをホームに残したまま白い煙を上げ動き出してしまった。

「もういいフレッド、早く戻って来るんだ!」
「冗談!もうチョイで届くってのに――よしッ!」

 フレッドは黒い手帳を頭上に掲げると、それと同時に猛ダッシュで列車に引き返した。だが既に列車はホームから離れ始めている。フレッドは徐々にスピードを上げる列車と平行してホームを走ったが、その差は少しずつ広がるばかりだ。
 残すホームもあと少し。その場にいた誰もが最悪のパターンを予期したその時、最後尾のデッキから、フレッドに向かって伸ばされる腕があった。

「掴まれ、フレッド!」
「待ってたぜジョージ!」

 まさに間一髪。身を乗り出し、限界まで伸ばされたジョージの腕を取ると、フレッドはホームの端を蹴って列車に飛び乗った。怒りと心配で絶叫寸前のウィーズリー夫人向かって、双子は誇らしげに胸を張り、列車がカーブに差し掛かるまで、ずっと手を振っていた。

「いやぁ、また1つホグワーツの歴史に伝説を残しちまったぜ」
「残しちまったぜ、じゃないだろう!お前はいったい何を考えてるんだ、もう少しで置き去りにされるところだったんだぞ!!」
「そう怒鳴るなよパース、間に合ったんだからいいだろう。ほらジニー、お待ちかねの日記帳だよ」

 ジニーの頭の上に、フレッドはポンッと黒い手帳を乗せた。それは年頃の女の子が持つには、少し不似合いな男物の日記帳だった。恐らくウィーズリー氏から入学祝として譲って貰ったのだろう、ジニーはそれを大切そうに自分の鞄にしまった。
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