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ハリー・ポッターと純血の守護者

第5章 【青空の旅】


 少し頬を染めながら「だってこの方がわざわざ取り出す手間が省けるじゃない」と言い訳するハーマイオニーだったが、この有り様を見た男の子2人が、何と言うのか分からない彼女ではない。
 結局ハリー達が来る前に、ハーマイオニーは読みかけの1冊だけ残してすべてトランクに仕舞う事になった。

 彼女が『トロールとのトロい旅』をトランクに詰め終わったのと同時に、窓から外を眺めていたクリスの目に燃えるような赤毛が飛び込んできた。

「ハーマイオニー、ロン達が来たみたいだ」

 去年と同様、出発時刻ギリギリだ。トランクの搬入を手伝おうとデッキに降りると、まず双子のフレッドとジョージに会った。その後にパーシーが重いカートを一生懸命押している姿が見える。

「手伝おうか?」
「なんの!レディの御手をわずらわせる程では御座いません、と言いたいところだけど……」
「今はネコの手も借りたいほどなんだ。頼むよ」

 カートに山のようにつまれた双子のトランクは、休み中に買い集めた悪戯グッズがパンパンにつまっているお陰で止め具がはち切れそうだったし、その後やってきたパーシーのトランクも詰め込まれた教科書のせいで、3人がかりで持ち上げるのがやっとだった。
 汗だくになりながら兄弟のトランクを積み終えると、やっと普通のトランクが登場した。

「これはジニーの分だな。……あ~あ、パパとママ、まだやってるよ」

 トランクの持ち主は、人ごみ離れたところで両親からくり返し最後の抱擁を受けていた。末っ子の、しかも女の子を手放す不安も分かるが今はとにかく時間がない。出発を知らせる一際大きな汽笛が鳴り響くと、やっとウィーズリー夫妻はジニーの身体を放した。

「ジニー、走れ!間に合わないぞ!」

 フレッドの焦った声が長い汽笛に紛れて消える。今や時間との戦いは秒単位となり、見守るほうも気が気ではない。そんな1秒すら惜しい慌しさの中で、あろうことかジニーが見送り客に押されて転んでしまった。幸いすぐに手をつきケガらしいケガはしなかった様だが、その拍子に肩にかけていた鞄から黒い手帳らしきものが落っこちた。
 それと同時に、ついに汽笛が鳴り終わる。しかしジニーは走り出そうとする列車に構うそぶりも見せず、一目散に手帳を拾いに戻ろうとした。

「何をやってるんだあいつ!?」
「ったく、これだからうちのお姫様は!」
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