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ハリー・ポッターと純血の守護者

第1章 The summer vacation ~Draco~


 ガラス張りの扉を開けバルコニーに出ると、たった今まさに星が1つ流れたところだった。幸い今夜は月明かりもさほど強くなく、また一面を緑に囲まれたウィルトシャー州にある屋敷では都会のようにネオンの邪魔も入らないので、星が良く見える。
 クリスは手すりぎりぎりまで身を乗り出し、夜空を仰いだ。

「あっ、また流れた!……すごいな、ちゃんと流星痕が残ってる」
「なんだ、流星群っていうからもっと雨のように降るかと思ったのに、全然少ないじゃないか」
「そういうのは流星雨って言って、滅多に見られるものじゃないんだ。……でも、もしかしたら場所によっては見られるかもしれないな。なにせ今年は特別なんだ!」

 こうみえてクリスは結構ロマンチストだ。ドラコは星ではなく、隣でうっとりと夢見るように星空を眺めるクリスの横顔を見た。その方が1分間に1つ見えるか見えないかの流れ星を待つよりよっぽど楽しい。
 それにいつも見せる小生意気な表情ではなく、流れ星を待ち焦がれては、星が流れるたび目をキラキラ輝かせるクリスなんて、なかなか見られるものじゃない。

「あっ、ほらドラコ、夏の大三角形だ」

 クリスは夜空に一際輝く3つの星を指さした。わし座のアルタイル、こと座のベガ、はくちょう座のデネブは夏を代表する1等星だ。ドラコもそれくらいは知っている。次にクリスは北極星と、ベガから少しはなれた星を指し示した。

「それであれがこぐま座で……そこから少し東に……あれだっ!見えるかドラコ、あれがお前と同じ名前の星座、“りゅう座”だ」

 こぐま座をぐるりと囲んだような大きな星座を、クリスは少し興奮気味に指さした。全体的に暗い星で構成されているりゅう座は、初心者には見分けが付きにくい。だがクリスの頭の中には、その形がしっかり記憶されている。目印の星さえ見つけられれば、あとは簡単だ。

「あれがトゥバンだ。知ってるか?今から5000年ほど前はあの星が北極星だったんだ」
「歳差のせいだろう。それくらいは授業でやったから知ってるさ」
「それにあのトゥバンも昔はもっと明るかったんだって。きっと昔の人は、あの星を目印に夜の砂漠を旅していたんだ……そう考えるとすごくロマンに溢れているよ。本当に良い星座から名前をもらったなドラコ、私は好きだよ」
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