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ハリー・ポッターと純血の守護者

第1章 The summer vacation ~Draco~


 はたして本当に夢だったのだろうか。恐る恐る辺りを見回したが、妖しい人影は何もないし、体もきちんと動く。部屋にも、何も代わった様子は無い。
 ドラコは妙に生々しかった悪夢から抜け出せた事に安堵し、ハアッと大きく息を吐いた。

「大丈夫か?なんだか随分うなされてたぞ」
「ああ、どうやら性質の悪い夢を見ていたらしい――って!うわあっ!」
「わあっ!?」

 ドラコが勢い良く跳ね起きた拍子に、上から覗き込むように覆いかぶさっていたクリスも一緒になって仰け反った。いつの間に部屋に忍び込んだのか、当たり前の顔をしてそこにいるクリスにドラコは悪夢の恐怖も忘れ、驚きのあまり心臓は早鐘のように打っている。

「どっどっどっど……どうしてクリスがここにいるんだ!?ここは僕の部屋だぞ!」
「そんなの分かってるよ。バスルームとドラコの部屋を間違えるほど私もマヌケじゃない」

 いくら許婚とはいえど当然寝室は別だ、彼女には彼女の部屋がある。それが夜もふけた寝室の、それもベッドの上にちょこんと座っていれば誰だって驚くだろう。しかし当の本人はいまいち意味が分からないという風に、首をかしげて言い返してきた。

「そうじゃなくて、どうして君がこんな時間に僕の部屋にいるんだって聞いているんだ。もう0時をまわっているんだぞ」
「だから起こしにきてやったんだ。お前の事だからどうせ忘れて寝ているだろうと思って」
「忘れるって、何をさ」
「やっぱりな……今日の午前0時と言えば、ペルセウス座流星群が一番良く見える時間帯じゃないか。夏休み前にシニストラ先生が仰っていただろう」

 そう言われれば、確かに夏休み前の最後の授業で天文学のシニストラ先生がちらっとそんな事を言っていた気もするが、そんな事をいちいち憶えているほどドラコは天文学に興味がなかった。ただし彼だけでなく、他の生徒の間でも天文学の人気は低く、毎度この授業を楽しみにしているのは今目の前にいる少女くらいなものだろう。
 興味がないのが顔に出たのか、クリスはムッと唇を尖らせると、無理やりドラコの腕を引っ張ってバルコニー際まで連れて行った。

「いいから、ほら、こんなに綺麗なんだ。見て損はないぞ」
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