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ハリー・ポッターと純血の守護者

第4章 【仕組まれた出会い】


 笑って誤魔化そうとしたが、クリスの顔を見てやめた。天にも上る心地から一転、クリスの心は地面にめり込むほど気分が沈んだ。憧れていただけに、ショックは大きい。

「これでウィーズリー家の人間はビルとチャーリーを抜かして全敗だな」
「いっそのこと、髪でも伸ばしてみたらどうかな?」
「嫌だ。そうすると余計に似るんだ」
「誰に?」
「父様に」

 伸ばしただけで女の子っぽくなるなら苦労はしない。クリスは黒い髪をつまむと、長ったらしい父の髪を思い出してため息を吐いた。

* * *

 その後ウィーズリー夫人の提案で、みんなで教科書を買いにフローリッシュ・アンド・ブロッツ書店まで行く事になった。先ほどの失敗を挽回しようとしているのか、ウィーズリー夫妻はクリスに「ぜひ一緒に行こう」と熱心に誘ってくれ、おまけにハーマイオニーのご両親――つまり生粋のマグル――に会えたことですっかり有頂天になっていたクリスは、ドラコ達の事などキレイさっぱり忘れて、ついそれに同行してしまった。

「いい?それじゃあ皆、お行儀良くするのよ」

 書店のそばまで来た時、ウィーズリー夫人がうきうきした声でそう言った。本屋に入るのにそんなお行儀よくする必要があるのかと思ったが、書店の天井から垂れ下がる横断幕を見て、クリス納得せざるを得なかった。派手な飾り文字で、ライラック色の横断幕にはこう書かれていた。

 【特別サイン会】
  笑顔の貴公子(チャーミング・スマイル賞連続受賞)
       ギルデロイ・ロックハート

「サイン会!?ママったら、まさか僕らの教科書全部にあいつのサインを入れさせる気じゃないよな」
 ロンはうめき声を上げたが、ウィーズリー夫人はまさにそのつもりだったようだ。黄色い声の渦巻く人ごみに混じりながら、少しでも彼を見ようと必死になって首を伸ばしている。その隣で、ずっと手を繋がされている末っ子のジニーが揉みくちゃにされて悲惨な事になっていた。

「ああ皆さん、どうかお静かに、お静かに……大丈夫、私は皆さんを置いて消えたりしませんよ」

 いかにも優男風な甘い声が響いたかと思うと、会場の奥様方が一斉に黄色い声を上げた。見ると人垣の一番奥に、軽やかなウェーブのかかった金髪の背の高いハンサムな魔法使いが立って、皆に向かってウインクを投げつけている。
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