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ハリー・ポッターと純血の守護者

第1章 The summer vacation ~Draco~


(ウソだろう!?…なんで……?)

 ホグワーツと違い、ここにはゴーストも性質の悪い妖魔も住み着いてはいないはずだ。
 ドラコはギュッと目を瞑り、息を潜めた。起きている事を悟られてはいけない、何故かドラコはそう思った。
 足音は部屋の中に入ってくると、まっすぐドラコの眠るベッドに近づいてきた。心臓がうるさいくらい耳につく。恐怖で叫びだしたいのに、言葉は何も出てきてくれない。
 そしてついに足音が止まったと思うと、急にベッドの端が重みで沈んだ。足音に変わり、今度はベッドの沈みが徐々に、徐々にドラコの方に這い上がってくる。

 前学期、罰則で禁じられた森に入ったときの恐怖が徐々に脳裏に浮かんできた。ドラコは目を瞑ったまま、そいつが早くいなくなってくれるよう心から祈った。しかしドラコの祈りも空しく、ついにそいつはドラコの上に覆いかぶさってきた。

(見ちゃいけない、絶対に目を開けちゃいけない!)
「……オォ…オオォ……」

 喉の奥から搾り出したような低いしわがれた声が真上から降ってきた。そればかりか生暖かい息が、頬のすぐそばで感じられる。
 ドラコは地の底から聞こえてくるような声から逃げ出そうと、必死になって体を動かそうとしたが、全身が氷漬けになってしまったように何もできず、声すら出せなかった。

(出て行け、早く消えてくれ)
「……ド…ラ…コォ……」
(消えろ消えろ消えろ消えろ!)
「……ド…ラコォ……ドラコ……」

 そいつは目を覚まさせようと肩を揺さぶってきたが、それでもドラコは頑なに目を開けまいとしていた。ここで目を開けたらきっと殺されるという奇妙な確信。恐怖の渦巻く中で、ドラコは必死に耐えていた。
 何をしても目をあけようとしないドラコに、声の主も苛立ちをあらわにし始めた。肩を揺さぶる力も強くなり、呼ぶ声も霞がかったものからハッキリしたものに変化していった。

「……目を覚ませ……ドラコ…起きろ――…ドラコ、おい!!起きろドラコ!!」

 どこか聞き覚えのある怒鳴り声に、ドラコは咄嗟に目を覚ました。すると一番初めに視界に入ったのは気味の悪い幽霊でも化け物でもなく、先週からこの屋敷に泊まりに来ていた幼馴染兼許婚のクリス・グレインだった。

「はあ~、やっと起きた」
「クリス?それじゃあ……今のは、夢?」
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