第30章 【祭りの前に】
「す、すまん。でもどうしておじ様が?」
「どうやら11人の理事を脅して、無理矢理ダンブルドアを停職に追い込んだらしいんだ。でもジニーが殺されると聞いて、11人の理事全員がダンブルドアに戻ってくるよう手紙をよこしたらしよ」
それを聞いて、確かにおじ様なら恐喝くらいやりかねないと思ったクリスだった。しかし、クリスが驚いたのはそれだけではなかった。何とあの日記帳をジニーに渡したのは、ルシウス・マルフォイ氏だったとハリーが言うのだ。
「ちょ、ちょっと待て。どうやっておじ様がジニーに日記帳を渡したんだ!?2人の接点なん無いに等しいだろう?」
「君、覚えてない?あの日フローリシュ・アンド・ブロッツ書店でウィーズリーおじさんと大暴れした事。あの時ジニーの本を拾うふりをして、一緒に日記帳を滑り込ませたんだ。そしてジニーが『秘密の部屋』を開け、生徒を襲っていると分かったら、『マグル保護法』を作ったウィーズリーおじさんを自滅に追い込めると思ったらしいよ」
ハリーの話を聞いて、クリスはハアッとため息をついて頭を抱えた。純潔主義者って、どうしてこう狡猾で排他的で底意地が悪いのだろう。これだからますます息子のドラコの性格が悪くなっていくのだ。親が決めた許婚の顔を思い出し、クリスは何度目かのため息をついた。
「それで?おじ様は大人しく帰ったのか?」
「大人しく帰ったと言うか……大人しく帰らざるを得なかったというか……」
「どういう事だ?」
「実は僕、自分の靴下に日記帳を入れて、マルフォイさんにあげたんだ。そしたらその靴下をはぎ取って投げ捨てたんだ――ドビーの手の中に」
「なんだっって?それじゃあ……」
「そう、もうドビーはマルフォイ家の屋敷しもべじゃなくなったって事さ。それどころか、マルフォイさんを魔法で吹き飛ばしちゃったんだ」
それを聞いて、クリスは青ざめたが、ロンはこれ以上いないっていうほど腹を抱えて笑い転げた。
「そりゃ良いや。僕もその場に立ち会いたかったよ!」
「知らないぞ、おじ様を敵に回しても……」
「面白いことを言うね、君も。まるでバジリスクよりマルフォイさんの方が怖いみたいだ」
「……ドラコと悪戯をするたびにあの威圧的な態度で怒られてきたんだ。トラウマにもなるよ」