第30章 【祭りの前に】
クリスが体験したありのままを話すと、ロンは喰い付くように続きをせがんだ。
「へえ!それでそれで?」
「サラマンダーの火の玉をバジリスクに当てて隙が出来た瞬間、あの不死鳥のフォークスがバジリスクの瞳を潰してくれたんだ――そういえばあの鳥、何処から入ってきたんだろう……」
「『秘密の部屋』にいた君にも分からないの?」
「ああ……どこからか不思議な旋律が聞こえてきたと思ったら、すでに『秘密の部屋』の中にいたんだ――ダンブルドアの鳥とは言え、不思議すぎるな。それにあの剣、あれも組み分け帽子の中から突然出てきたんだ」
「それじゃあ、君たちは半分は運で勝った様なものなの!?」
「運と言うのも実力の内だ。――とはいえ、不確定要素が多すぎるがな」
とにかく、ハリーが帰って来てから話を聞こうと言って、それぞれソファーに倒れこんだ。なんにしても今夜は疲れすぎた。マダム・ポンフリーの苦~い痛み止めを飲んだおかげで体の痛いところは無いが、体力は回復していない。それから20分ほどソファーに寝転がっていると、ゆっくりと「太った淑女」の扉が開いて、待ちに待ったハリーが帰ってきた。
「ハリー!!」
ロンがバネのおもちゃみたいに、ぴょーんと飛び起きた。ハリーは疲れてはいるが、顔は何だか良いことがあったようにスッキリとしている。
「それで!?ダンブルドアの話は何だったの?!」
「まさか1人で美味しいところだけもっていこうって腹じゃないよな」
「大丈夫、2人にも説明するよ。それで、何処から聞きたい?」
「初めっから最後まで、全部さ!」
「……OK」
それからハリーは、ダンブルドアと話したことを全て2人に打ち明けた。自分がパーセルマウスなのは、『例のあの人』に殺されそうになった際、『例のあの人』の力の一部を受け取ってしまった事。そして実は1年前の組み分けの時、組み分け帽子からスリザリンに入っても上手くやっていけると言われた事。しかし自分はグリフィンドールを選び、その結果、真のグリフィンドール生にしか手にできない、ゴドリック・グリフィンドールの剣を組み分け帽子から取り出した事。そして、校長室に、ルシウス・マルフォイがやって来たこと――。そこまで聞いて、クリスが思わず声を上げた。
「おじ様がぁ!!!?」
「クリス、声が大きいよ」