第30章 【祭りの前に】
「ご――ごめんなさい。あたしが――あたしがやったの……でも、自分でもどうしてそうなったか分からなくて――嘘じゃないんです。本当にリドルがあたしにやらせたの――あたしに乗り移って……そうだ、リドルは?リドルはどこ?確かに日記帳から出てきたはずなのに――」
混乱して大粒の涙を流すジニーに、ダンブルドアが優しく肩をたたいた。
「もう大丈夫じゃよ、ミス・ウィーズリー。トム・リドルは去った。トム・リドルは――いや、今はヴォルデモートとしてアルバニアの森に隠れているはずじゃ」
「な、なんですって?――『例のあの人』が、ジニーに魔法をかけただって?」
それまでウィーズリー夫人の陰に隠れていたウィーズリー氏が、素っ頓狂な声を上げた。
「いくら家が純潔だからって、『例のあの人』と家は、何の関係もないはずです!それがどうして?」
「この日記帳なんです!!」
ハリーは急いでローブから穴の開いた例の黒い日記帳を取り出した。
「リドルは16歳の時に、この日記帳を書いて、自分の記憶を封印したんです」
「なるほど――うむ、実に見事じゃ」
ダンブルドアはそれをまじまじと見つめながら言った。
「確かに彼は天才と言える頭脳を持っていた。ヴォルデモートが、トム・リドルと言う名前で、このホグワーツで学んでいたことを知るものは数少ない。わし自身、50年前このホグワーツで一教師として彼を教えておった。卒業後、トムはあちこちへと旅をして、闇の魔術にどっぷりと浸かっていった。そして旅をするごとに何度も危険な変身を遂げ、今のヴォルデモート卿として変貌していったのじゃ」
「でも、どうやってうちのジニーが、『例のあの人』に呪いをかけられたんです!?うちのジニーと何の関係が!?」
「そ、その日記帳なの――それがリドルの日記帳なの。あたし、いつもその日記帳に自分の事を書いて……ずっと返事をもらっていたの!」
「なんだって!!」
ウィーズリー氏が雷に打たれたように叫んだ。
「パパがいつも言っていたじゃないか!脳みそが何処にあるか分からない物に、勝手に手を出してはいけないって!どうしてパパやママに相談してくれなかったんだ、そんな怪しいもの闇の魔術が詰まっているって事はハッキリしているじゃないか!!」