第30章 【祭りの前に】
医務室に着くと、まず初めにマダム・ポンフリーの叫び声から始まった。死んだと言われていたジニーは、気を失ってはいるが生きているし、クリスは頭から血を流しているし、ハリーはローブ全体が返り血でベトベトに汚れている。おまけに呪文が逆噴射して記憶を失ってしまったロックハートまでいるのでは、確かに叫び声の1つでも上げたくなる。
それからはまるで嵐の様だった。まず最初にマダム・ポンフリーがマクゴナガル先生を呼びに行き、先生が来たと思ったら、何故かダンブルドアやウィーズリー夫妻も一緒で、ウィーズリー夫人はベッドで眠っているジニーの顔をなでると、次にハリーとロンとクリスを力いっぱい抱きしめた。
「あなた達がジニーを助けてくれたのね、本当に本当にありがとう!」
ウィーズリー夫人の顔には幾筋もの涙の跡があり、マクゴナガル先生さえ、キラリと一筋の涙を見せた。しかし3人が驚いているのは、この場にダンブルドア校長が居ることだった。マルフォイ氏に学校を追い出されたはずなのに、なぜ今ここにいるんだろう。それにダンブルドアは、まるですべてを知っているかのように、穏やかな笑みを浮かべているだけだ。
「ミスター・ポッター、ミスター・ウィーズリー、ミス・グレイン。あなた方は一体どうやって『秘密の部屋』まで行き、ミス・ウィーズリーを助けたのですか?」
マクゴナガル先生の質問に、3人は顔を見合わせた。特にハリーとクリスはいったいどこからどこまで話していいのか分からず、結局、全ての説明をハリーに託した。
ハリーはまず、姿なき声を聞いたことから話し始めた。そしてそれがパイプを伝わるバジリスクの声だとハーマイオニーが気づいた事、3人でクモを追って禁じられた森に入った事、アラゴグがバジリスクの最初の犠牲者が「嘆きのマートル」のトイレで死んだ事、そしてトイレのどこに『秘密の部屋』の入り口があるかハリーが考えた事。それらをクリスはマダム・ポンフリーの治療を受けながら聞いていた。
その時、ジニーが目を覚ました。そして両親とマクゴナガル先生とダンブルドア先生の顔を見て、顔を真っ青にして泣き始めた。