第29章 【炎の精霊サラマンダー】
「貴様、何故立ち上がれる?――そうか、不死鳥の涙……癒しの力かッ!!」
「これで3対2だ、どうする?」
「どうするもこうするも、お前たちを殺すだけだ!!行け!バジリスクよ!!」
リドルの命令に従って、バジリスクがクリス達目がけて襲ってきた。クリスは瞳を合わさぬよう薄目でハリーの前に立ちふさがった。
「紅蓮の炎よ、盾となり我が身を守りたまえ!!」
炎が盾となり、バジリスクは一瞬怯んだ。その隙を狙って、フォークスがもう一つのバジリスクの瞳を突き刺した。勢いよく赤黒い血がドバドバ流れ、これでもう目が合っただけで殺される心配は無い。しかしまだ毒牙とその巨大な体が残っている。どうする――悩むクリスの横で、ハリーが組み分け帽子をかぶっていた。
「何やってるんだハリー、こんな時に!」
「ダンブルドアが送ってきたんだ。何か絶対意味があるはずだ……イテッ!」
何かが帽子の中から、ハリーの頭を強打した。恐る恐る帽子の中に手を入れてみると、何と中から立派な銀色の剣が出てきた。柄には卵ほどのルビーがついている。感動しているのもつかの間、バジリスクが匂いを頼りに2人をめがけて襲ってきた。クリスの体は勢いよく吹き飛ばされてしまい、背中と後頭部を柱に強打した。
『小僧だ、まずは小僧を殺せ!!』
「そうはさせないっ!!サラマンダー!!」
クリスはよろよろと立ち上がると、再びサラマンダーに命令をした。
「灼熱の炎よ、鞭となり悪しき者を縛り付けよ!!」
サラマンダーの両手から、縄のような炎が飛びだし、バジリスクの巨大な体に巻き付いた。バジリスクは炎の熱に苦しみながらも、クリス達を喰らおうと大きく口を開けて暴れている。
「ハリー、長くはもたない!一撃で決めてくれ!!」
「分かった!!」
ハリーは、組み分け帽子から出てきた剣を握りしめると、バジリスク目がけて突っ込んでいった。それを待っていたように、バジリスクは大きく口を開けた。
一瞬、ハリーがバジリスクに食べられてしまったように思ったが、次の瞬間、バジリスクの口蓋から銀色にきらめく剣が飛び出し、勢いよく血が噴き出した。そしてバジリスクの口から血に汚れたハリーが姿を現すと、バジリスクはぴくぴくと痙攣をした後、全く動かなくなってしまった。