第29章 【炎の精霊サラマンダー】
クリスが大粒の涙を流しながらハリーの体を揺さぶると、フォークスも傍らにやってきて瞳から数滴の涙を流した。その様子を見て、リドルはこれ以上ないって言うほど大きくそして滑稽そうに高笑いをした。
「はっはっはっはっは!!良かったなポッター。友人だけじゃなくて鳥まで涙を流してくれて」
「許さない……お前だけは絶対に許さないッ……」
クリスはもう一度、召喚の杖を握った。すると今度は温かさではなく、熱い炎の感触が手を伝わって感じる。これならもう一度召喚できる。そう確信したクリスははっきりとした声で叫んだ。
「灼熱の炎を纏いし紅の巨人よ!古より伝わりし血の盟約において汝に命ず、出でよサラマンダー!!」
クリスの足元に赤い魔方陣が光り、目の前が2メートル以上もの炎が燃え上がったかと思うと、そこから再びサラマンダーが姿を現した。
サラマンダーが両腕を大きく上げると、先ほどの2倍以上はある火の玉が幾つも燃え上がり、全てバジリスク目がけて飛んで行った。火の玉は見事命中し、バジリスクは苦しみもがいて体をよじらせた。柱を壊し、そしてクリス達の体を吹き飛ばした。
ハリーの体が壁にぶつからない様に庇うと、クリスの体はまともに壁に叩きつけられてしまった。背中がものすごく痛かったが、ハリーの痛みに比べればどうってことない。杖を支えにして立ち上がると、クリスはもう一度火の玉を食らわせてやった。
「行け!サラマンダー!この部屋ごと奴らを燃やし尽くしてやれ!!」
「はっはっは、勢いが良いな。この場で殺すのが惜しいくらいだ!!」
「死ぬのは貴様の方だ!!」
サラマンダーが大きく息を吸うと、今度は炎の息吹がバジリスクを襲った。その効果は絶大だったようで、バジリスクはのたうちまわって炎から逃げようとした。なにかあいつの目を潰せるもの――クリスはハリーの背中に刺さっていた毒牙を手にすると、のたうちまわるバジリスク目がけて突っ込んでいった。しかし暴れまわるバジリスクに、逆に吹き飛ばされてしまった。
激痛を耐え、もう一度――立ち上がろうとするクリスの肩を、後ろから誰かが掴んだ――ハリーだ!
「ハリー!?どうして……?」
「僕にも良く分からないけど、フォークスが助けてくれたみたいだ」
「フォークスが?」