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ハリー・ポッターと純血の守護者

第29章 【炎の精霊サラマンダー】


「炎の化身サラマンダーよ、紅蓮の炎で彼の者を焼き尽くせ!」

 サラマンダーは両手を高々と上げ、先ほどより倍は大きな火の玉を作ると、バジリスク目がけて投げつけた。すると火の玉は見事命中し、バジリスクはその巨大な体を大きくくねらせた。その刹那、フォークスが空中からバジリスクの目をめがけて急降下した。
 ズブリと突き刺さる音と共に、バジリスクの目からどす黒い血がどばどばと流れ落ちた。

「よしっ!あと1つ!!」
「素晴らしい力だね、その力、僕の為に使ってくれないか?――インペリオ!」

 リドルがクリスに向かって呪文を唱えた瞬間、クリスはまるで自分の体から魂が抜けたような感じがした。フワフワして、何も考えられない。頭の中で、リドルの声がかすかに聞こえてきた。

『さあ、火の玉を小僧にぶつけるんだ』
(小僧?……小僧って誰だ?ハリーの事か?)
『そうだ、杖を構えて精霊の力を見せつけるんだ!!』
(精霊の……力?)

 ぼーっとする頭で、クリスは言われた通り召喚の杖を構えた。しかし精霊はその場に止まったまま、動こうとしない。

「何をしてるんだ!早くポッターを殺せ!!」

 リドルの大声が、部屋中に響いた。その声も、クリスの耳にはフワフワとした音でしか聞こえない。言われた通り杖を構えても、精霊は何の動きも見せず、姿が薄っすらと霞んでいくと、そのまま消えてしまった。

「ええい、もういいこの役立たずが!!バジリスク、先にこの女から殺せ!!」

 パーセルタングでリドルが命令すると、フォークスに気を取られていたバジリスクが、クリスめがけてその牙をむき出しにして襲ってきた。しかし予想していた痛みばいつまでたってもおとずれず、代わりにクリスの頬に、赤い血が飛び散った。

「……クリス……へい……き?」
「ハ、ハリー?」

 クリスのローブを血で汚しながら、倒れこむようにハリーがズルズルと床に伏せった。一瞬、何が起こったのか分からなかった。ハリーの肩にバジリスクの毒牙が刺さり、そこから赤い血がどくどくと流れて床を真っ赤に染めている。庇ったんだ、ハリーは自分の身をていして、クリスを。それが分かった瞬間、クリスの中で何かが暴走した。

「うあああああああああぁぁぁぁぁぁ!!ハリー!ハリー、起きて、ハリー!!」
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