第28章 【トム・リドル】
「ハグリッドは無実だ、君がハグリッドを嵌めたんだ!!」
「ああそうさ、僕があいつを『秘密の部屋』の後継者に仕立て上げ、退学に追いやったのさ」
しかし、ハリーの言葉なんて何てことないと言う様に、リドルはくすくすと笑ったままだった。
「実に単純だったよ。片方は貧しくて孤児だが、成績優秀で勇敢そのものの監督生で模範生。もう片方は図体ばかりでかくて、ドジで事件ばかり起こす問題児。当時の校長がどちらの意見を選ぶかなんて一目瞭然だった。でも驚いたよ、学校中の皆がハグリッドが『秘密の部屋』の後継者だと思っているだなんて。僕でさえその場所を発見するのに5年もかかったんだ。……それをあのでくの坊が!そんな脳みそあいつにあると思うかい?!」
それからふと、リドルの顔から笑みが消えた。
「しかしあのダンブルドアだけが、ハグリッドは無実だと訴えた。ハグリッドを学校に置き、森番をさせることを当時の校長に進言した。おそらくダンブルドアには察しがついていたんだろな。他の先生は皆僕がお気に入りだったらしいが、ダンブルドアだけは違った」
「ダンブルドアは、きっと君のたくらみを全て知っていたんだ!!」
「そうかもしれない。だが僕にはそんなこと関係なかった」
再びリドルの顔から笑みがこぼれ出た。端整な顔が歪む度、どこかぞっとするような気持ちがした。
「学校が閉鎖騒ぎになって、僕は在学中に再び『秘密の部屋』を開けるのは危険だと悟った。しかし探索に費やした長い時間を無駄にするつもりはなかった。だから僕は日記に記憶を宿し、僕の足跡を追わせ、サラザール・スリザリンの崇高な意思を引き継いでくれることを願った」
「だが、それは失敗に終わったようだな」
「そうだ!君は何も成し遂げてはいない!ネコ一匹だって殺してやいないじゃないか!!」
「ああ、そういえばまだ言ってなかったね。僕の目的はもう『汚れた血』なんかを殺すことじゃない。僕の目的はそう――君たちだよ」
クリスは、まるで心臓を掴まれたような苦しみが襲ってきた。ハリーも目を見開き、二の句が継げないでいる。茫然とする2人を前に、リドルはまた話を始めた。