第28章 【トム・リドル】
「正解。そしてこの小さなお馬鹿さんは、自分の魂が少しづつ吸い取られているのにも気づかず、なんでもかんでも日記に書きこんできたよ。『兄さん達がからかう』『おさがりのローブや教科書を使うのが恥ずかしい』そうそう、こんなことも書いてあったよ『有名で、素敵で、かっこいいハリー・ポッターが自分の事を好きになってくれるはずがない』とか『ハリーにお似合いなのはきっとクリス・グレインだわ。綺麗で、堂々としていて、召喚術さえ扱える……私は足元にも及ばない』全くバカバカしい悩み事を聞いてやるのはうんざりだったよ」
ジニーの純情を踏みにじるなんて許せない。クリスはふつふつと怒りがわいてきたが、ハリーはなんとか冷静を保ってクリスにジニーを運ぶ手助けを頼んだ。
「もういい、早くジニーを運んであげよう。じゃないといつバジリスクが来るか分からないし」
「そうだな――」
ハリーとクリスがジニーの肩を担いだ瞬間、ハリーの頬をかすめる様に赤い閃光が走った。急いで振り向くと、そこにはいつの間にかハリーの杖を持ったリドルが、薄ら笑いを浮かべていた。
「話しはまだ終わってないよ、ハリー」
「君の話に付き合ってる暇はないんだ、急がないとバジリスクが襲ってくるかもしれない」
「大丈夫、僕が呼ぶまで来ないよ」
「どういう事だ、貴様……」
「おっと、僕に杖を向けない方が良い。じゃないとこの子が死ぬことになるかもしれないよ」
リドルが、赤い瞳と共に杖をジニーに向けた。その冷たい視線に背中が凍り付きそうになり、悔しいがクリスは言われるがまま杖を下げた。
「そう、君はそうやって大人しくしていてくれ。まずはハリー、君に話があるんだ」
「僕に話って、いったい何だい」
ハリーが噛みつくように答えた。一刻も早く、ジニーを安全な場所に連れて行きたいという気持ちのあらわれだ。
「そうだね、さっきの話の続きをしよう。そこの小さなお馬鹿さんは、なんでも僕に打ち明けた。そして僕もそれに付き合ってやったさ。辛抱強く、下らない小さな悩みにも親切に返事を返してあげた。その結果、ジニーは僕に夢中になった。『トム、あなたほど私の話を真剣に聞いてくれる人はいないわ。まるで本当の親友のようだわ』傑作だったよ、自分の魂を注ぎ込んでいるとも知らず日記に下らない悩み事を打ち明けるのがさ」