第28章 【トム・リドル】
ついに扉が開かれると、ハリーとクリスは緊張しながら部屋の奥へと進んでいった。部屋の中は薄暗く、蛇が絡み合う彫刻が施された柱が、整然と並んでいる。
きつい位ぎゅっと握りしめた手からお互いの汗がにじんでいた。そしてゆっくりゆっくりと前へ進みながら辺りを照らしていると、部屋の一番奥に、黒いローブと燃えるような赤い髪が見えた――ジニーだ!!
急いでそばに駆け寄ると、ハリーがぐったりとしたジニーを抱きかかえた。
「ジニー、ジニー!お願いだから目を開けて!!」
「しっかりしろ、ジニー!おいジニー!!」
ハリーが揺さぶると、ジニーの体はぐったりとしていて、凍る様に体が冷たかった。もしかしたら、もう――
「大丈夫、その子はまだ生きているよ」
クリス達の疑問に、ゆったりと、しかし冷たい声で誰かが声をかけた。この声は、いつかどこかで聞いたことがある。ぎこちなく声のする方へ顔を向けると、そこには依然禁じられた森でクリスを助けてくれた、少年の姿があった。
「「トム……リドル!?」」
不思議なことにハリーと声が揃い、お互い驚きを隠せなかった。なぜハリーがこの少年の事を知っているのだろう。この事は誰にも言っていないのに……。同時にハリーも驚きが隠せない様子だった。
「2人とも驚いている様だね」
柱の陰に隠れていた少年は、少しだけ体をこちらに向けて話し始めた。
「ハリー、君が日記の中で見た少年も、クリス、君を助けてあげた少年もどちらも同じ、僕の記憶だ。日記の中に50年間封印されていた記憶だよ」
「……記憶?」
「どういう事だい、リドル。君が何を言っているのか分からないよ」
「だから、それを今から教えてあげるよ」
くすくすと、まるで人を馬鹿にして様な笑みを浮かべるリドルをが、ふっと柱の陰から消えたと思ったら、シュッとクリス達の目の前に現れた。そしてどこからか黒い日記帳を取り出した。
「これが何だかわかるかい?」
「それは……リドルの日記?」
「そう、そして1年近くもこれを手にしていたのは誰だと思う?」
リドルが手にしている日記帳、あれは新学期が始まる日、キングズクロス駅でジニーが手にしていた日記だ。そしてマートルのトイレに投げ込まれた日記帳でもある。だとしたら持ち主は――。
「まさか、ジニーか!?」