第27章 【握りしめた手】
ため息とともに、ロンが言葉を吐いた。こんなに巨大なら、目を合わせなくとも一口でペロリと食べられてしまいそうだ。ロックハートは青ざめた顔で腰を抜かしていた。
「さあ立て」
ロンがロックハートに向かって杖を突き付けながら言った。
「こんな所に置いて行かれたくなかったら立っ――」
ロンが言いきる前に、ロックハートはゆっくりと立ち上がると――突如ロンに飛びかかってきた。正に万事休す、ハリーとクリスが抜け殻に目を奪われていた際の出来事だった。ロックハートがロンの杖を奪うと、久々に生気が戻ってきた顔で笑った。
「さあ諸君、お遊びはここまでだ。私はその抜け殻をほんの少し持ち帰り、女の子を救うには遅かったと涙ながらに語ろう。そして君たちは可哀相に、無残に亡くなった女の子の死骸を見て気が狂ったと説明しよう。さあ、これまでの記憶にさよならを告げるといい!!――オブリビエイト!!」
「危ない!!」
途端にロンの杖が爆発を起こし、トンネルの天井が崩れ落ちた。クリスはハリーが瞬時にかばってくれたおかげで、瓦礫の下敷きにならずに済んだが、トンネルが崩壊した所為で、さっきまで立っていた場所が瓦礫の山に埋もれて通れなくなってしまった。
「ロン!大丈夫か!?ロン!!」
「僕は大丈夫だ、それより君たちは!?」
「私たちなら大丈夫だ!」
「それなら安心だ。だけどこいつは駄目だな、壊れた杖の所為で呪文が逆噴射したみたいだ」
「やあ、ここはどこだい?なんだか気味の悪い場所だね。――アイタッ!」
間の抜けたようなロックハートの声が、瓦礫越しに響いた。何もわからず真暗闇をふらふら歩いているもんだから、そこら中に頭をぶつけている様だ。
「どうする?この壁、崩せると思うかい?」
「いや、止めた方が良い。下手したらトンネル全体が壊れるぞ」