第27章 【握りしめた手】
クリスの言葉に、緊張が走った。時間を無駄にはできない。ジニーが連れ去れて、もう何時間も経っているのだ。一刻の猶予もない。クリスは覚悟を決めた。
「よし!私は先に進む!ハリーとロンは、ロックハートと一緒にここで待っていてくれ」
「駄目だ!君を一人で行かせるなんてできないよ!だったら僕も行く!!」
「僕も――」
とロンが言いかけて、口を閉ざした。本当は友人の為、なにより妹のために助けに行きたいのはロンの方だろう。しかし今は分厚い瓦礫の山がそれを邪魔している。侭にならない思いを壁にぶつけると、ロンは震える声で喋った。
「僕は、ここの瓦礫を少しでも取り除いてみるよ。君たちが帰って来られるように。だから――絶対帰ってきて」
「ああ、分かった。約束だ」
クリスは恐怖を払拭するように、出来る限り力強い声で頷いた。そしてハリーと顔を見合わせると、2人でトンネルの先へと進んだ。緊張で喉がカラカラで、喋りたくても声が出なかった。
ハリーとクリスは、お互いを励ましあう様に手をつないで道をすすんだ。トンネルの先へと進むほど、2人はぎゅっと固く手を握り合った。そして何度も曲がり角を進み、足が少々疲れてきたころ、遂に『秘密の部屋』の入り口と思われる場所にたどり着いた。壁に2匹の蛇が絡み合い、それぞれ目の部分に、きらめく様なルビーとサファイアが埋め込まれている。
「準備は良いかい?」
「――ああ」
2人は息を吸い込むと、握り合った手をもう一度固く握りしめた。
『開け、秘密の扉よ』
シューシューと言う、パーセルタング独特の言葉が口から出ると、2匹の絡まった蛇が分かれた。クリスはいつでも目を閉じられるよう準備しながら、その時を待った。