第27章 【握りしめた手】
「お前から先に入ってもらおうか」
「わっ、私が?なぜ?杖もない私はもう何の役にも立てないんだよ?」
「役に立つさ、これからなッ!」
そう言うと、ロンはロックハートをパイプの前まで引きずり、有無を言わさず穴の中へ蹴り落とした。しばらくはロックハートの情けない叫び声がこだましていたが、だんだんそれも薄れていき、最後には何も聞こえなくなった。
「あいつ、死んだかな?」
「分からない。でも僕たちも降りてみよう」
ハリーを先頭に、ロン、クリスと続いてパイプの中を滑り降りて行った。パイプの中は真っ暗でぬるぬるしていて、とても快適とは言えなかったが、ジニーの事を思うとそうも言っていられなかった。この先にジニーが待っている。どうか無事でいてほしい。そう祈りながら、クリスはパイプの中を滑って行った。
どのくらいの間パイプの中を滑っていっただろう。曲がりくねったパイプを永遠とも思える闇の中滑り落ちて行った。そして突然、パイプが平らになり出口から放り出された。
「うわっ」
ドシン、と音を立ててクリスは尻もちをついた。辺りは真っ暗で何も見えない。唯一見えるのは、ハリーの杖明かりだけだ。クリスも立ち上がると急いで杖を取りだし明かりをつけた。
「随分長い距離を滑り落ちてきたみたいだな」
「多分、学校の何キロも下の方に違いないよ」
杖明かりで辺りを確認しながら、ハリーが言った。暗い闇の中、ハリーとクリスの杖明かりだけが頼りだった。壁も床も、水浸しでびしょびしょだ。きっと湖の下に違いないとロンが言った。ロックハートはまるで幽霊のように顔を真っ白にして、何も言わずただゆっくりとクリス達の後についてきた。
それからどのくらい歩いたのだろう。真っ暗いトンネルの中を目を細めながらゆっくりと歩いていると、前方に何か巨大なものがみえた。全員反射的に目をつぶった。そしてゆっくりと目を開け、それが動かないことを確認すると、ハリーが一歩一歩慎重に進んでいった。そして杖を高く掲げると――毒々しい緑色の蛇の抜け殻がとぐろを巻いていた。目算で、ゆうに6メートルはある。
「これが抜け殻ってことは、本体は何メートルあるんだよ……」