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ハリー・ポッターと純血の守護者

第27章 【握りしめた手】


「――死んだの」

 そう言うと、マートルはニタリと笑った。

「どうやって?」
「知らない。覚えているのは黄色い目玉と目が合った事。そしたら一瞬金縛りにあったみたいに体が固まって、それからふわ~っと浮いて……また戻ってきたの。私絶対オリーブ・ホーンビーに憑りついてやろうって決めていたから。オリーブの奴、私のメガネをからかった事を思いっきり後悔していたわ」
「その目玉を見たって、どのあたり?」
「どこかその辺」

 マートルは手洗い場の辺りを漠然と指さした。クリス達は急いでマートルが指した手洗い場に、何か手掛かりがないか探し始めた。急がなくては、ジニーの命が危ない。いや、もしかしたら既に――そんな悪い予感を振り払うように、クリスは頭を振った。思い出せ、実家にある秘密の部屋の肖像画は、いったいなんて言っていたか。

「赤き太陽が闇に覆われし時、純潔なる双子の乙女、聖なる名において我らを守りたもう……純潔なる双子の乙女……双子の乙女――」

 その時、クリスは割れた鏡に映った自分の姿を見てピンときた。

「そうだ!鏡だ!!鏡の割れていない鏡台を探せ!」

 クリスの言葉に、ハリーとロンが素早く反応した。『嘆きのマートル』のトイレは殆ど鏡が割れており、割れていないのは1つしかなかった。

「これだよクリス!何かおかしな所は――」

 ハリーが隅々まで調べると、青銅の蛇口の脇に引っかいた様な小さな蛇の形が彫られてあった。3人は心臓が震えるような思いがした。これがきっと『秘密の部屋』の入り口に違いない。クリスはゴクリとつばを飲み込んだ。

「2人とも、準備は良いか?」
「もちろん」
「では……『開け、秘密の扉よ。汝が我に正しき姿を現したまえ』」

 すると、蛇口がまばゆい光を放ち、クリス達は思わず目を覆った。ゴゴゴゴと石のこすれる音と共に、『秘密の部屋』の入り口がゆっくり開かれていく。光が治まった頃、クリス達が目を開けるとそこにはむき出しの大きなパイプがあった。中をのぞいても、真っ暗で何も見えやしない。

「さあ、行こう」
「おっと、その前に――」

 ロンが、『嘆きのマートル』のトイレの隅で、へなへなと力なく座っているロックハートに杖を向けた。
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