第3章 【常闇のノクターン】
古ぼけた仕掛け時計を見ると、もう12時を過ぎていた。ハーマイオニーは今頃何をしているだろう。彼女の手紙にはロンとハリーも今日の買い物に誘うつもりだと書いてあったが、会えただろうか。何にせよ、少なくとも自分のように陰鬱な店内で無駄な時間をつぶしてはいないはずだ。
「なあクリス、これ見てみろよ。今までに17人のマグルを殺した呪いの首飾りだって書いてあるぞ」
性懲りもなく、ドラコが興奮気味に指差したガラスケースの中には、大粒のオパールの首飾りが飾られていた。その隣りにけばけばしい飾り文字で『危険・絶対に御手を触れないでください』と書かれている。
「ちょっと試してみたいと思わないか?……そうだな、あの穢れた血のグレンジャーにでも」
「やってみたらどうだ?その時はアズカバンの監獄から片道直行便の切符が届くはずだから」
胸糞悪くなって、クリスはさっさとその場から離れた。しかし店中そんな品物だらけなのだから、例え首飾りから離れたところで、悪趣味なものが目に入るのは変わらない。右を向いても左を向いても、気分が悪くなる物ばかりだ。いくら父でも、屋敷にここまで露骨な闇の品は置いていない。
おまけにろくに掃除もしていないのか、全体的にホコリっぽく、暖炉どころか床にまで灰やススがまき散っていて、いるだけで病気になりそうだ。
「こんなところ早く出たいんだけどな……ん?」
床に散った灰を見て、クリスは妙な事に気が付いた。薄汚い店内に惑わされていたが、よく見ると灰はただ撒き散らされているだけでなく、石造りの暖炉から近くの飾り棚まで続いている。そればかりか、飾り棚の取っ手にまで灰がついているではないか。
クリスは己の胸に抑えきれぬ好奇心が湧き上がるのを感じた。さりげなくドラコの様子をうかがうと、天井からつるされた干し生首にご執着で、まるでこちらに気づいていない。息を潜め、クリスはそっと飾り棚のとってに手をかけた。そしておそるおそる扉を開いてみると――