• テキストサイズ

ハリー・ポッターと純血の守護者

第3章 【常闇のノクターン】


「まったくだ。“あれ”以来役人どもが余計に五月蝿くなっていてな。マグル保護法などと馬鹿げた法律ばかり作り、挙句由緒正しき我々純血者が追いやろうなど愚の骨頂だ。そればかりか今回もまた例の視察が入るらしい。つまらん言いがかりで人の屋敷に足を踏み入れようなど無礼極まりない」
「仰る事はよく分かります閣下。最近では純血の価値がとみに低くなっておりまして……もちろん、私は違いますよ」
「分かっている、だからこそ今日は君に頼みがあって来たのだよ、ボージン君」

 ルシウスはローブから長い羊皮紙を取り出すと、それをカウンターの上に広げた。クリスは羊皮紙の内容こそ一瞬しか見なかったが、それを読んだ時ボージンの顔色が一変したのはしっかり目撃した。

「そこに書いてある物を、いくつか君に引き取ってもらいたい。視察で見つかると――少々やっかいな事になりかねんのでな」
「……分かりました。ここでは何ですので、どうぞ奥へ」
「話が早くて助かる。2人とも、私は少々店の奥にいるがその間決して店のものには触れるなよ。分かっているな――ドラコ」

 ルシウスの灰色の目が、今正にしなびたミイラに触れようとしていたドラコを捉えた。たじろぐドラコに、商売人の顔に戻ったボージンがニコニコと手をもんで近づく。

「さすがご子息様はお目が高くいらっしゃる。それは『輝きの手』と言ってどんな暗闇でも悟られる事なく明かりを灯す優れものです。とりわけ空き巣などに大変役に立ちますよ」
「空き巣か――マルフォイ家の跡継ぎとしてはもう少しマシなものになってもらいたいが……1年前まで魔法の魔の字すら知らなかった穢れた血の小娘に試験で負けるようでは、存外そんな将来かもしれんな。なあクリス?」

 この嫌味はドラコだけでなくクリスにも突き刺さった。返す言葉もなく、ようやくルシウスがボージンと共に店の奥に引っ込むと、クリスは腹の底から搾り出すような深いため息を吐いた。

「はあぁ~……疲れた」
「君はまだいいさ、僕なんか朝からずっとだ。今日は箒を買ってもらう約束だったのに……この分じゃそれも怪しいな」
「私も、今日1日こんなつもりじゃなかったんだけどな」
/ 294ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp