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ハリー・ポッターと純血の守護者

第27章 【握りしめた手】


 先生たちが職員室から出て行ったのを確認してから、クリス達も寮へ戻って行った。
 ジニーが攫われたと言う事実は生徒達にも告げられた。その所為で談話室は静まり返り、いつもうるさいジョージやフレッドもこの時ばかり黙ったままだ。こんな日は生まれて初めてだった。いつも当たり前のようにそばにいる筈の人間が居ない。クリスでさえショックなのだ、家族のロン達はもっとショックだろう。現にロンは職員室から出た後、一言も口をきいていない。
 何かロン達のために出来ることは無いだろうか。クリスはさんざん考えてみたが、良い考えは一つも浮かばなかった。やがて夜の帳が落ち始めたころロンがポツリとつぶやいた。

「……ジニーは何か知ってたんだよ」

 下を向いていて表情は分からなかったが、ロンの声が震えていた。

「あの時、ちゃんと話を聞いてやればよかった。パーシーの話なんかじゃなくて、ちゃんとジニーの話を聞いてやればよかったんだ。ジニーは『秘密の部屋』に関して何か見つけたんだ、その所為でジニーは――」

 ロンのズボンの上に、ぽつぽつと水滴が落ちた。こんな時になんて言葉をかけていいか分からないクリスは、そっとロンを抱きしめた。その上から、ハリーも2人を覆う様に抱きしめた。どのくらいそうしていただろう。突然ハリーが、ひっそりと、しかし力強い声で話しだした。

「行こう、ロックハートの所へ。まだジニーが死んだって決まったわけじゃない。ロックハートの所に行って、僕らの知っている情報を全て話そう!」

 不思議だ。絶望に陥っている時こそ、ハリーの言葉が心強く感じられる。ハリーの一言で、奮い立つ勇気が出てくる。クリスは心の中に温かい炎が灯るのを感じた。

「……そうだな、やるだけやって、足掻くだけ足掻いて……泣くのはそれからだって良いはずだ」
「さあ、ロン立って。行こう、ジニーのいる所に!」

 ロンは袖口で激しく涙をぬぐうと、すっくと立ち上がった。まだ目は赤かったが、その顔は覚悟を決めた男の顔だった。

「分かった、行こう!」

 談話室には数人しか残っていなかった。その数人も、ウィーズリー兄妹が気の毒で何をしようとも止める気さえ起こせなかった。だからクリス達が談話室から出るのにも一言も口を挟まなかった。
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