第26章 【狙われた少女】
「僕たち、その……様子を見に来たんです――」
「――ハ、ハーマイオニーの!」
ハリーの言葉尻を、ロンがすくい上げた。もう作戦はこれしかない。クリスも調子を合わせることにした。
「私たち……もう何か月もハーマイオニーの顔を見てなくって……それで、教えてあげたくなったんです。『明日になれば、もう治るよ』ってもう心配ないよって……それで、それで……」
ううっと言って、クリスは両手に顔をうずめた。それに合わせるようにして、ハリーとロンがクリスの肩を抱いた。ちょっと芝居臭すぎたか、と思ってチラリとマクゴナガル先生の顔色を窺うと、なんとあのマクゴナガル先生の目から、涙が2、3滴零れ落ちた。
「そうでしょうとも……一番つらい目にあってきたのは誰でもない、親友のあなた方でしょう。分かりました。先生方には私から言っておきますから、あなた達はゆっくりお友達のお見舞いをしてあげなさい」
そう言って、マクゴナガル先生は廊下を曲がって行ってしまった。静かな廊下に、微かにマクゴナガル先生の鼻水をすする音が聞こえてきた。こんなにあっけなく面会の許可が下りたことに唖然としながら、3人は成り行きで医務室へ行くことになった。
医務室に着くと、マダム・ポンフリーは訝しげながらも3人の面会を許してくれた。しかし石になったハーマイオニーに出来ることなど何もなく、3人は茫然と石になったハーマイオニーを見下ろしていた。
「明日には、ハーマイオニーも治るんだよな」
「……うん」
「早く明日になればいいのにな」
そう言ってハーマイオニーの手を握ると、何かクシャッとした物が手にふれた。よく見ると、固く結んだ拳の中に、破れた古い紙切れのようなものを握っている。悪戦苦闘の末、何とか破かずにその紙切れを引っ張りだすと、皺を伸ばして書かれている文章を読んだ。
【バジリスク】
古代から生息している怪物で、とても凶暴な性格と凶悪な性質を持っており、別名『毒蛇の王』とも呼ばれている。牙に毒を持っているのが特徴だが、最も恐るべき特徴は視線で人を殺すことである。
また、バジリスクは蜘蛛の天敵であり、蜘蛛が逃げ出す時バジリスクが現れると言われている。バジリスクにとって弱点は雄鶏の鳴き声で、唯一それからは逃げ出すのが特徴。