第26章 【狙われた少女】
こんな時にこんな言っては罰が当たるかもしれないが、石になったハーマイオニーが少し羨ましかった。石になれば、試験を受けることもない。出来ることなら立場を逆にしたいと、ちょっと思ってしまった。そう思って、隣りの空席を見てちょっと反省した。たまにはハーマイオニーを見習って、勉強に励もうとそう思った。
そして試験の3日前、マクゴナガル先生が朝食の席でまた発表があると言った。ダンブルドアが返ってくると言って興奮する者、スリザリンの後継者をを捕まえたと言って興奮する者、クィディッチの試合が再開されるんだと言って叫ぶ者――はウッドだけだったが――と、皆意気揚々としていた。しかし、マクゴナガル先生の発表は皆の予想とは違っていた。
「スプラウト先生のお話では、とうとうマンドレイクの収穫が出来るそうです。明日の朝一番に、石にされた人達を蘇生させることが出来るでしょう。被害者の中から、何に襲撃されたのか、また誰に襲撃されたのか話してくれるかもしれません。私はこの恐ろしい襲撃事件が犯人逮捕で終わることを大いに期待しています」
その瞬間、爆発的な熱気が辺りから巻き起こった。静かなのはせいぜいスリザリンの寮生くらいで、他の寮生は皆、手に手を取って喜んでいる。ジョージとフレッドなど、まるでリオのカーニバルのごとく椅子の上に立って派手に踊っている。ハリー、ロン、クリスの3人も喜びはしたが、中でも一番ロンが喜んでいた。
「やったぜ、これでもうマートルのトイレに行く必要が無くなったな。でもハーマイオニーの奴、目が覚めたら試験が3日前だって知ったら、きっと半狂乱になるぜ!あいつの事を考えたら、このまま寝かせていた方が親切かもな!!」
ハーマイオニーの復活を知って、3人は笑みをこらえきれなかった。だがそんな中で、ジニーが沈んだ顔でロンの隣りにやってきた。ハリーの前だと言うのに顔を真っ赤にしておらず、むしろ顔が青ざめている。
「どうしたんだよジニー、腹でも痛いのか?」
「ううん……ちがうの」
「じゃあ何だよ、言ってみろよ」
「あたし……あたしね、言わなきゃいけないことがあるの」
小さい体をより小さくしながら、ジニーは言おうか言うまいか迷っていた。視線は下を向き、何かにおびえているように足をもじもじさせている。まるでスネイプの前に立った時のネビルの様だとクリスは思った。